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入試問題分析ー2017年洛南高附中①ー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

2017年洛南高附中の随筆

今回は、2017年洛南高附中の大問一を取り上げます。

この問題を解いたのは、男子538名・女子245名の合計783名です。
洛南の先生方は、9時30分に終わったテストの答案を採点し、合計点を出します。
入試とは、1点が人生を左右する場所です。
ですから、採点ミスはあってはなりません。
答案は、幾重にもチェックがなされます。
そして、明後日の15時までに合格発表をするのです。

算数のように採点がしやすい答案とは違い、国語の答案は採点に時間がかかります。
小問数が多いですし、誤字脱字のチェックにも時間がかかります。
何より大変なのが、記述問題の「ゆれ」の許容範囲を決める作業です。
記述問題のゆれについては、以前の記事をご覧ください。
www.otasukekokugo.com

ですから、多くの学校は、記述問題ではなく、「採点しやすい」抜き出し問題を設置します。
その中には、答えありきの無理やりな問題が含まれることも事実です。

しかし、洛南は、良質な記述問題を各大問に設置した上で、文章の全体像をつかんでいるかを確かめるための抜き出し問題を用意しています。
問題の意図を理解し、文章全体の構成を理解し、答えに当たるものを正確に見つける。
抜き出し問題は作成が非常に難しいのですが、洛南の入試問題には、先生方の「受験生の国語力を正確につかみたい」という熱意が表れていると思うのです。

2017年洛南高附中随筆文の解説

松原始さんの「あの日、カラスは応えたのか」からの出題でした。
岩波科学ライブラリーの『科学者の目、科学の芽』に収録されています。
他にも、「人魂の行方」「汽車の汽笛は本当にポッポーか?」など、興味深い内容が満載です。
↓ぜひ、全文をご覧ください。

まずは、文章全体の構成を追っておきましょう。

筆者が小学生のころ、カラスの鳴き声に対して、筆者も鳴き真似をしてみたところ、鳴き返してきた。

大学院でカラスを研究するようになった結果、カラスが鳴き返してきたと考える積極的な根拠はないと考えた。

しかし、実験を繰り返すうちに、やはり鳴き真似をしているのではないかと考えるようになった。

直観を信じることも必要だし、仮説を公正にとらえて自分に都合の良い結果を疑うことも必要だ。

研究者に必要なものを説明した、論説的な随筆です。
具体的を省いて、要点を単純化すると、以上のような流れの文章であるとわかります。
そして、設問もまた、それぞれの要点が理解できているかを問う問題がほとんどなのです。

(1)の解説

この文章には次の一文がぬけています。どこに入れるのがふさわしいですか。その直後の五字を答えなさい。(、。は字数に数えます)
人間同士ならば、その解釈でもよいかもしれない。

脱文挿入の問題です。
「ここからここまでの範囲から探しなさい」といったように、範囲が指定されている場合は難度が下がりますが、今回は文章全体から探さなければならないので、難しいです。
抜き出し問題は、「場所の推測」と「内容の推測」が可能か否かによって問題のレベルが変わります。
www.otasukekokugo.com
「場所の推測」…「人間同士ならば、その解釈でよいかもしれない」という脱文から、カラスが返事したことに疑いを持ちかける、前半部分にあるとわかります。
しかし、場所の細かな限定は難しいため、若干しらみつぶしのように探す必要もあります。

「内容の推測」…脱文の内容から、「カラスが自分の声に反応した→挿入箇所→実はそうではないという説明」という内容の部分にあると推測できます。
こちらは、前後の論理関係から、ほぼ間違いないと考えられます。
レベルはCです。

(2)の解説

(あ)~(お)にあてはまることばを、次のア~オの中から選んで、それぞれ記号で答えなさい。ただし、同じ記号は二回使えません。
ア たまたま イ なるべく ウ おそらく エ 決して オ まるで

→副詞の問題です。「たぶん~だろう」のように、後に決まった表現を用いるものを、「呼応の副詞」といいます。
「たまたま~だった」
「なるべく~する」
「おそらく~だろう」
「決して~ない」
「まるで~ように」
というように、空欄の後には決まった表現があるとわかるため、易しい問題です。ぜひ全問正解したいところです。
レベルAです。

(3)の解説

=線A「か」とB「う」について、同じ働きで使われているものを、それぞれ次のア~オの中から一つ選んで、記号で答えなさい。
→Aは「私の鳴き真似に応えたのか」とあるため、疑問の表現だとすぐにわかります。
答は「エ 今何時か…」となり、レベルはAです。
Bは「ならないであろう」となり、推測しているとすぐにわかります。
答は「イ 明日は良い天気だろう」となり、レベルはAです。

(4)の解説

―線①「この経験」とありますが、このときの「私」にとって大切なことは何であったと考えられますか。次のア~オの中から最もふさわしいものを選んで、記号で答えなさい。

→単純な指示語の問題かと思いきや、実は意外と複雑な問題です。
選択肢が、どれも間違ったことを書いているわけではなく、「本文にはあるが、答えとして求められているものではない」ものばかりなので、素直にひっかかってしまう受験生も多かったでしょう。
傍線部の少し前に、「『友人たち』を見送りながら」という表現があるため、筆者は、自分の呼びかけに応えてくれたと思ったとき、カラスに親しみを覚えていたとわかります。
指示語の直前をそのまま使うわけではなく、直前部分までの内容を大きくまとめて、「友人たち」というプラスの表現で終えている選択肢を選ぶことになります。
答は「オ 鳴き返してきたカラスに対して親しみを覚えたこと」となります。
レベルはBです。

(5)の解説

空欄Xに共通して入るひらがな二字を答えなさい。

→「…この経験が忘れられなくてカラスを研究しようと決心したとXは言わない」
「自分に都合の良い結果Xも疑わなくてはならない」
それほど難しくありません。レベルはAです。

(6)の解説

―線②「検証」は、「木」のつく漢字と「言」のつく漢字を組み合わせたことばです。次の(1)~(3)には、同じように「木」のつく漢字と「言」のつく漢字を組み合わせたことばが入ります。それぞれ答えなさい。
・進学について先生に(1)する。
・クラスで交通安全の(2)を考える。
・(3)すれば彼の話はすべて作り話だ。

→どれも「きへん」と「ごんべん」の漢字を使う答えだったので、(1)と(2)はわかりやすかったかもしれません。
部品が決められていて、それを使った熟語を作る問題は、それほどめずらしくありません。
(1)の「相談」はレベルA
(2)の「標語」はレベルB
(3)の「極論」は小学生レベルを超えています。レベルCです。

(7)の解説

空欄Yに入ることばを、二十五字程度で考えて答えなさい。

→文章中の空欄を、その前後関係から推測して記述形式で埋める問題です。
推測が容易かどうか、入れるべき材料が近くにあるかどうかでレベルが決定します。
空欄の前後は「だが、当時の自分には「Y」というう発想すらなかった」とあります。
ここから、どこかにカラスの返事に対する二つの考え方があり、その一つ目が答えの材料になるだろうと考えられます。
推測は難しいのですが、材料自体は前の段落にあるため、探しやすいです。
答は「自発的に鳴いた場合と返事をした場合を区別する」となります。
レベルはBです。

(8)の解説

―線③「鳴き真似に合わせるように、鳴き方を調整している」とありますが、「鳴き方を調整」するとはどうすることですか。文章中の言葉を用いて、二十字以内で説明しなさい。
→傍線部を別の表現で言い換える問題です。
言い換え問題は、傍線部を分割して考えましょう。
①「鳴き真似」
②「合わせる」
③「鳴き方を調整している」
以上3点を、表現を変えて説明しましょう。
①「鳴き真似」…筆者の鳴き真似
②「合わせる」…一致させる
③「鳴き方を調整している」…自分の鳴き方を特徴に近づけて

この①~③を、―線部を含む段落中の言葉を使ってまとめれば、答えは「鳴き方を鳴き真似の特徴と一致させること」となります。
レベルはBです。

(9)の解説

―線④「この不思議な二重唱」とは、具体的にはどういうことですか。それが分かる一文を文章中からぬき出し、最初の五字で答えなさい。

→傍線部を具体的に言い換える問題です。
条件に「具体的に」とあることから、「小学生時代の作者」が、「カラスに向かってカアカアと鳴き真似をした」ところ、「同じ調子で返事をしてきた」という内容の一文を探せばよいとわかります。
以上のように、内容の推測は容易ですが、場所の推測は難しいです。
レベルはBです。

(10)の解説

―線⑤「今、改めて動物学者として言おう」とありますが、「私」のカラスに対する考えは推移しています。そのことについて説明した文のa~fにあてはまることばを、字数に合わせて文章中からぬき出して答えなさい。

→洛南おなじみの抜き出し問題です。
解答のざっくりした方向性はつかめても、答えのある場所が広範囲に散らばっているため、場所の推測が厳密にできず、また、答えの可能性がある言葉の候補も多いため、難度は非常に高いです。

aは、「直感」が入ります。場所は、その文脈から、文章の初めの方にあると思いきや、最終段落の直前にあるため、悩んだ受験生も多かったでしょう。
bは、「仮説」が入ります。文章の流れをつかんでおけば、「仮説」が入るだろうと推測することは可能です。
cは、「集団」が入ります。空欄の直後に「cのうちの一羽」とあるところから判断しますが、それほど文章全体の流れとは関係ないため、探しにくいです。
dは、「他のカラス」が入ります。文脈から、なんとなく答えの内容はわかっても、どこにあるかがわからず、苦労します。答となる五文字が、段落をまたいでいるのもレベルを上げています。
eは、「数分以内」が入ります。空欄後の内容から、「すぐに」的な内容であると推測が可能です。
fは「調子」です。空欄直後に「fを変えて鳴いた」とあるので、文章全体の流れから、「調子」はすぐに思いつくでしょう。

以上、内容の推測もしくは場所の推測のどちらかが難しいものが多いため、レベルはCです。
すぐに答えが分からなかった場合は、潔くこの問題を飛ばして、最後に一問でも稼ぐつもりで取り組んだほうがよかったかもしれません。

おわりに

いかがでしょうか?
洛南の入試問題は、唐突に難しい言語事項の問題をはさんできたり、抜き出しの問題がハイレベルだったりと、受験生の集中力を途切れさせてしまう要素が多いです。
60分間という制限時間をフルに使い、無駄なく一問でも多く正解するために、問題のレベルを見抜き、取りこぼしの無いように得点しましょう。
そのためには、解説をもとに、「この学校はこのくらいのレベルの問題が多い」といったような傾向をつかんでおくことが必要なのです。
「この学校のこの年度の解説・レベル設定を教えてほしい!」というご要望がございましたら、いつでもご連絡ください。
過去問題集・赤本をもとに、しっかりと傾向をつかんでくださいね!

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