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入試問題分析ー2017年灘中二日目②ー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

2017年灘中2日目の随筆②

今回は、2017年の灘中1日目の大問二を取り上げます。
灘中の特徴を上げるとすれば、「言語事項と記述」ということになるでしょう。
何十年間も同じ傾向で入試を続ける全国最難関の灘中。
そこには、語彙力の豊富さこそが国語の基礎であり、それを表現することが国語の中心であるという強い意志が感じられます。
今回も、各小問ごとにレベルを解説していきましょう。

2017年灘中1日目の大問二の解説


ドナルド・キーンさんの『ドナルド・キーン自伝』からの出題でした。
アメリカに生まれた作者が、戦争という悲劇に見舞われながらも、日本に留学し、司馬遼太郎三島由紀夫川端康成大江健三郎といった、綺羅星のごとく居並ぶ文豪たちとの交流が描かれます。
↓ぜひ、全文をお読みください。

まずは、構成をつかんでおきましょう。

海軍語学校を卒業した筆者は、派遣先の真珠湾で日本軍の文書を翻訳する仕事をしていた。

亡くなった日本人兵士の日記を翻訳することになった。

そこには、死を覚悟した兵士の本心が書かれていた。

筆者は、日記を上官に渡さず、兵士の希望通り、家族に渡そうと考え、机に隠した。

しかし机は調べられ、日記は没収された。

日記を通じて出会った彼らが、筆者が心を通わせた最初の日本人だったのだ。

灘中の記述問題は、本文にそのまま使える材料がある問題は少なく、傍線部にこめられた筆者の意図を自分の言葉でまとめなおす問題が多いです。
文章の本質をつかんでいないと書けない問題が多いため、難度が高くなるのですね。
小問ごとに解説をしていきましょう。

問一の解説

―線部A~Fのカタカナを漢字に改めなさい。
灘中の漢字は、本文の中の言葉を使って問題が作られます。
小学生の既習漢字を使っていて、かつ小学生には縁遠い言葉がばんばん出てくる文章があれば難度を上げることができますが、そんな都合の良い文章はあまりありませんね。
ですから、灘中の漢字問題はそれほど難しくありません。

リクチの上
中学受験生でない小学生でも正解できるでしょう。
答は「陸地」ですから、同音異義語もありません。レベルはAです。

ブショに配属された
今回の中では一番誤答が多い問題でしょう。
「ブショ」は、公文書などでも誤用されることがあります。
「いくつかに分かれている場所」という意味を推測し、「部所」と書いてしまいがちです。
しかし、正解は「部署」です。
小学生の生活から遠く、同音異義語による間違いが予測されますが、「署」を推測することは可能ですから、レベルDまではいきません。レベルCです。

C戦争をシュウケツさせる
文脈から「終わらせる」という意味であることはわかります。
「シュウ」も「ケツ」も推測が可能です。
「集結」という同音異義語もありますが、間違える受験生は少ないでしょう。
レベルはAです。

D文書は~サイシュウされたものだった。
「採り集める」という意味だとつかみやすいため、レベルはAでしょう。

E情報をテイキョウしてしまう
中学受験生であれば一度ならずとも書いたことがあるでしょう。
レベルはAです。

F日記をシキュウされ
中学受験生であれば一度ならずとも書いたことがあるでしょう。
レベルはAです。

問二の解説

―線部1「その機密を外部の者に漏らした者が絞首刑になるのを最後まで責任を持って見届けるつもりだ」とありますが、大尉はこの言葉でどのようなことを言おうとしていますか、答えなさい。

傍線部以外の部分を使って言い換える問題ではありません。
傍線部の表現の意味するところをつかみ、自分の言葉で言い換えましょう。
大尉は、軍事機密を漏らした者がどういう末路をたどるかを筆者に伝えたのです。
絞首刑=死 となるわけですから、「絶対に漏らしてはいけない」と伝えたかったのですね。
解答は「軍事機密を絶対に外部の者に漏らしてはいけないということ。」となります。
自分の言葉で言い換える問題ですが、比較的考えやすいため、レベルBです。

問三の解説

―線部2「愉快この上ない」とありますが、この表現にこめられている筆者の気持ちとして、最も適当なものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。
「愉快この上ない」とは、言うまでもなくプラスの表現です。
しかし、傍線部の直前に「こうした」という指示語があるので追いかけると、問三で考えた「情報を漏らすと絞首刑になる」という部分が見つかります。
これは当然マイナスに受け取ると考えます。
つまり、筆者は「心中はマイナス、表現はプラス」という複雑な状況であるわけです。
これを、「皮肉」といいます。
「皮肉」と合う選択肢は、オの「反感」です。
材料が傍線部の近くにありますが、その変化の度合いは大きいです。しかし、消去法が有効なので、レベルはBです。

問四の解説

―線部3「判で押したような」とはどういう意味ですか、答えなさい。

本文中から材料を見つける問題ではありません。
「判で押したよう」という比喩が意味するところを正確につかみ、言い換えましょう。
傍線部の前に、「日課の報告書」や「用紙やインク瓶の数量」などという内容があることから、「見ても面白くない」や「血の通っていない」などといった内容を書いてしまうかもしれません。
しかし、この問題は「比喩表現の言い換え」であることに注意しましょう。
比喩表現の言い換えは、言い換え前と言い換え後の共通点をつかまなければなりません。
「判で押した」とは、「ハンコを押す」ことです。
ハンコは、何回押しても同じ印影になります。
ここから、「判で押したよう」とは、「かわりばえのない内容」であることがわかります。
自分の言葉で言い換える問題で、少し想像しにくいですから、レベルCです。

問五の解説

―線部4「『間違い』を指摘し」とありますが、筆者が「間違い」に「 」をつけたのはなぜだと考えられますか。理由を答えなさい。

カギカッコの用法に注目させる問題です。
カギカッコには、次の四つの用法があります。
①セリフ・思い
②引用・題名
③強調
④通常とは違う意味を持たせている
今回は④のパターンです。
筆者は、退屈な文書の翻訳に飽きて、少しでも楽しくするために、日本語の文書を古風な英語にしたり、通俗小説の文体で訳したりしていたのです。
これは、形式こそ海軍英語ではないですが、内容としては間違ってはいないわけです。
筆者は、「間違ってはいない」という気持ちがありながらも、大尉に「間違い」と指摘されたことに反発し、カギカッコつきで表現したのですね。
答えは「形式を古風にしたり通俗小説の文体にしただけで、内容は間違ってはいないから。」となります。
材料が傍線部の近くにありますが、変化の度合いは大きいので、レベルBです。

問六の解説

―線部5とありますが、「日記の筆者」が「本当に感じたことを書」くことができたのはなぜですか。その理由を説明した、次の文の空欄X・空欄Yに入れるのに適当な言葉をそれぞれ十字以内で答えなさい。

【 X 】ことを予感するような状況では、【 Y 】ことなど気にならなかったから。

傍線部を含む段落に、「彼らは上官が日記を検閲することを知っていて、それは日記に記された感想が十分に愛国的かどうか確かめるためだった」とあります。
また、傍線部の直前に、「自分が一人になってマラリアにでも罹れば、なにも偽りを書くいわれはなかった」とあります。
これらを材料として、それぞれ十字以内にまとめましょう。

【 X 】は「自分が死んでしまう」が、【 Y 】は「日記が検閲される」が入ります。
【 X 】は、材料は傍線部と近いですが、かなり変化が必要なので、レベルBです。
【 Y 】は、変化は小さいですが、傍線部から少し遠いので、レベルBです。

問七の解説

―線部6とありますが、日記を没収されたことがどうして「痛恨の極み」だったのですか。理由を答えなさい。
「痛恨の極み」とは、強いマイナスの心情です。
その理由も当然マイナスになります。
傍線部の直前に「これは」とあるので、指示語を追いかけましょう。
すると、「日記は没収された」が直接の理由であるとわかります。
これを中心とし、説明を肉付けしましょう。
筆者は、日記を兵士の願い通りに家族に届けようと思っていたのですね。
その思いを遂げられなくなったため、筆者は「痛恨の極み」となったわけです。
以上をまとめると、答えは「日記が没収されてしまい、日本人兵士の本心を家族に伝えることができなくなってしまったから。」となります。
中心となるポイントは見つけやすいですが、過不足なく説明するのに若干手こずるかもしれません。
レベルBです。

問八の解説

―線部7とありますが、「本当に知り合った」とはどういうことですか、答えなさい。

傍線部とその直後には「私が本当に知り合った最初の日本人は、これらの日記の筆者たちだったのだ。」とあります。
他の日本人と、日記の持ち主であった日本人との違いを考えれば、「本当に知り合った」の意味をつかむことができます。
それは、問七でも読解した通り、「相手の本心に触れた」ということです。
どうやって本心に触れたかを説明して付け加えれば、解答の完成です。
亡くなった兵士の日記に書かれた本心に触れ、心を通わせていたということ。」となります。
何を書けば良いかが問題からつかみにくく、言い換える内容が考えにくいでしょう。レベルはCです。

おわりに

いかがでしょうか?
前回と同じく、傍線部の内容を自分に引き寄せ、自分の言葉でまとめさせる問題が多いことに気がついていただけたでしょうか?
本文中に材料がある場合も、その材料を大きく変化させないとうまく答えにならないように工夫してあることがわかります。
灘中の先生方は、きちんと自分の言葉で文書の内容を説明することができる理解力と語彙力を持った子に入学してほしいと考えていらっしゃるのでしょう。
灘中の受験生は、そんな先生方の思いに応えるべく、使える言葉をしっかりと増やし、説明する訓練を積まなければなりません。
過去問題集・赤本をもとに、しっかりと傾向をつかんでくださいね!

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