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入試問題分析ー2017年東大寺学園①ー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

2017年東大寺学園の論説文

今回は、入試問題分析を行いたいと思います。
まず始めは、東大寺学園の論説文を取り上げてみました。
毎年、全国各地の主要な中学校の入試問題を解いています。
その中でも東大寺学園の入試問題は、トップクラスの良問ばかりです。
単に難問であるというわけではありません。
記述問題ばかりで、受験生に理解を丸投げするような形式でもありません。
選択肢問題や場面分け・段落分けの問題を解いていくことで、最後に用意されている長文記述問題を解くことができるような仕掛けがなされているのです。
それは、入試という場においても、単なる受験生の選別にとどまらず、少しでも学力を引き上げようとする姿勢の表れだと思うのです。
というわけで、私は東大寺学園の入試問題が日本で一番お気に入りなのです。

2017年東大寺学園論説文の解説

成毛眞さんの『情報の「捨て方」知的生産、私の方法』からの出題でした。
↓ぜひ、全文をお読み下さい。

まずは、文章全体の流れを追っておきましょう。

前半の話題…なぜ情報を扱う必要があるか?

説明①…いい情報を得て排出しつづけると、情報アンテナが磨かれ、審美眼が鍛えられる
説明②…いつか思い出せる教養を得られる
説明③…教養があれば、新たなアイデアが多く生み出せる

後半の話題…得た情報をわざわざ壁画という形でアウトプットしてきたのはなぜか?

説明①…アウトプットは行為そのものが単に楽しい
説明②…かつて得た情報を一人でも思い出せるような工夫の一つとして壁画に描いてアウトプットしていた

具体的を省いて、要点を単純化すると、以上のような流れの文章であるとわかります。
そして、設問もまた、それぞれの要点が理解できているかを問う問題がほとんどなのです。

(一)の解説

=線部A「短絡的な」・B「天賦の才能」の意味として最も適当なものを、次のア〜エの中からそれぞれ一つずつ選んで、その記号「書きなさい。
→まず、「短絡的な」がマイナス系の意味があるととらえると、「ありきたりな」と勘違いするかもしれません。
「短絡的な」考え方のあとに、もう少ししっかりと考え直した内容が書かれていることから、答えは「すぐに思いつく」であるとわかります。
判断の根拠は=線部と近いですが、指示部分を言い換える問題は少し難しくなります。消去法が使えるため、レベルはでしょう。
続いて「天賦の才能」です。
=線部の後に、「しかし」という逆接の接続語があることから、=線部の後の部分の反対の内容か答えであるとわかります。
「努力すれば誰でもできる」の反対が答えということになるので、「エ 生まれつき備わっている能力」が正解とわかります。
論理を組み立てやすいため、レベルはでしょう。

(二)の解説

ー線部①「情報も同じです」とありますが、どういうことですか。その説明として最も適当なものを、次のア〜エの中から一つ選んで、その記号を書きなさい。

→ー線部内の「も」に注目すると、ー線部の前に、筆者が情報と同じ性格があると考えているものがあるとわかります。
また、ー線部の後にも、こんどは「情報」についての説明もあります。
ー線部の前後だけを見ればわかる問題であり、また、正解の選択肢がー線部の前後とほぼ同じ内容を述べているため、判断しやすいです。
正解は「ウ 食事をくりかえすなかで食べたものの一部が体を作っていくのと同じように、得た情報の大半は消え去ったようでも、その一部が役立つものになって残っていくということ。」となります。
レベルはです。

(三)の解説

ー線部②「読んだ内容は忘れていい」とありますが、それはなぜですか。その説明として最も適当なものを、次のア〜エの中から一つ選んで、その記号を書きなさい。

→ー線部のある部分の次の段落が、「教養」について触れた部分であり、それまでとは話題が変わっています。
ですから、ー線部の説明はー線部の前にあると推測できます。
ー線部に「読んだ内容は忘れていい」とあるので、探すべき理由は「忘れてもプラスだ」という方面の内容だと推測できます。
以上二点をもとに材料を探すと、「きっかけがあれば思い出せる」や「実は忘れていない」という内容があり、これらが先ほど考えた条件と合うようです。
しかし、選択肢の内容は、文章をそのまま使ったものでは無く、少し変化しているので気をつけましょう。
正解は「イ 本から読みとった情報は、忘れたり捨てたりしたつもりでも残っているものなので、手がかりさえ残しておけば、その情報にいつでもたどりつけるから。」となります。
レベルはです。

(四)の解説

ー線部③「教養は最強の情報になります」とありますが、それはなぜですか。五十字以内で説明しなさい。

→ー線部③のすぐ直前からしか「教養」について話されていないため、材料はー線部③の後にしかないと推測できます。
また、情報も13行目以降は、人類がかつて壁に絵を描いていたという話題になっているため、その部分までが材料のある場所だとも推測できます。
これで範囲の推測は終わりました。
次は内容の推測です。
ー線部に「教養=最強の情報」とあるので、教養のプラス的内容を述べている部分を使えば良いのです。
「得た情報の活用範囲はまったく異なります」
「教養があれば、得た情報が…何に『似ているか』がわかります。…アイデアを多く生み出せるわけです。」
という部分があり、この部分をまとめればよいのです。
材料のある場所は遠くありませんが、ポイントが多く、形を大きく変化させる必要があるため、レベルはとしています。
この辺りの問題で、きっちり部分点を稼ぎ切ることが大切です。

(五)の解説

ー線部④「描くというプロセスを経て、誰かに何かを伝えようとしたのでしょう」とありますが、私たちがふだん使っている漢字の中にも、絵を描くような方法によって物の形をかたどってできたものがあります。次の(I)・(II)は、それぞれ現在の何という漢字ですか。例にならって、その漢字を、それぞれ一字で書きなさい。

→いわゆる「象形文字」を見抜く問題です。
どちらの字も、与えられた形から推測しやすいので、レベルはでしょう。
正解は「雨」と「羽」ですね。

(六)の解説

ー線部⑤「その時点で話を読み取れていない」とありますが、それはなぜですか。その説明として最も適当なものを、次のア〜エの中から一つ選んで、その記号を書きなさい。

→ セオリーとして、ー線部の中に指示語がある場合は、まずそれを明らかにしましょう。
指示語の指す内容は、「私は絵を描くのが苦手です。だから楽しくありません」の部分です。
理由を探すわけですが、材料となる部分は直接そのまま本文に書いてあるわけではありません。
材料そのものはー線部の近くにありますが、変化の度合いがかなり大きいので、レベルはでしょう。
答えは「エ 他人と比べて絵を描くのが苦手だから楽しくないというのは、人間はもともと、自分の思っていることを表現すること自体に喜びを感じるものだという、筆者の意見を理解できていないから。」となります。

(七)の解説

本文を内容の面から二つのまとまりに分けるとすると、どこで分けられますか。後半の始まりの五字を、ぬき出して書きなさい。

→段落分けの問題です。東大寺学園では頻出の問題ですから、論説文を読むときは、前もって自分で「ここで一区切りつきそうだ」という部分を探しておきましょう。

最初に述べたように、文章の構成は次のようになっています。

前半の話題…なぜ情報を扱う必要があるか?

説明①…いい情報を得て排出しつづけると、情報アンテナが磨かれ、審美眼が鍛えられる
説明②…いつか思い出せる教養を得られる
説明③…教養があれば、新たなアイデアが多く生み出せる

後半の話題…得た情報をわざわざ壁画という形でアウトプットしてきたのはなぜか?

説明①…アウトプットは行為そのものが単に楽しい
説明②…かつて得た情報を一人でも思い出せるような工夫の一つとして壁画に描いてアウトプットしていた

答えは、後半のはじめの五字のみを書けばよいので、「数万年前か」となります。
レベルはです。

(七)の解説

ー線部⑥「壁画は、記憶のトリガーとしても大いに役立っていた」とありますが、どういうことですか。八十字以内で説明しなさい。

東大寺学園お馴染みの、長文記述です。
傍線部を別の表現を使って説明する、言い換え問題です。
まずは、「壁画」が「記憶のトリガーとしても大いに役立っていた」とはどういうことかを説明しましょう。
「トリガー」とは、いうまでもなく「引き金」のことです。
「トリガー」について言及している部分を探すと、「得た情報の大半は忘れてしまうが、思い出すためのトリガーは必要だ」という部分が見つかります。
傍線部の直前に、偶然思い出せるのではなく、「もう少し能動的に、自分ひとりででも思い出すための工夫」をするべきだとあり、この役目をするのが壁画であると作者は述べています。
以上の内容をまとめると、かなりの高得点が期待できます。
さらに、傍線部の中に「記憶のトリガーとして大いに役立っていた」とあることから、トリガーのほかにも役目があるとわかります。
かなり前になるのですが、後半のはじめに「アウトプットは楽しい」という内容があったことを思い出しましょう。
壁画は、描くことそれ自体が楽しいのです。
書くべきポイントが多く、離れた場所にありましたが、そのまま使えるポイントが多いため、レベルはです。
国語で合格するためには、3ポイント中2ポイント以上は取りたいところです。

おわりに

いかがでしょうか?
実際の入試問題と照らし合わせてご覧いただけると、楽しんでいただけると思います。
最難関校の入試問題とはいえ、レベルCやDばかりが並ぶのではないということを感じていただけると嬉しいです。
大切なことは、落としてはいけないところを取りこぼしなく、レベルC以上の問題でさらなる加点を狙うということです。
そのためには、どの問題がどのレベルかを知っておく必要があるのです。
関西以外でも、設問レベルを知りたい学校がありましたら、問題が手に入る限り対応しますので、メールかコメントで教えていただければと思います!

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皆様とお子様が、笑顔で中学入試を迎えられますように。

お助け中学入試国語 ゆり