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詩の細部読解part3「主題」

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

詩の細部読解の最終回は、主題についてお話ししたいと思います。
主題とは、外来語で言うなれば、「テーマ」ということです。
その詩を使って、作者は読者にどんなことを伝えたいのか。
詩の理解の最終段階といえますね。

これまでにお話しした内容の復習も加えながら、主題を理解するための糸口を見つけていきましょう。

表現技法に注目する!
詩の細部読解part1でお話しした内容です。

作者は、限られた字数の中で、自分の言いたいことを読者に伝えようとします。
そうなると、必然的に「目立たせたり、大げさにしたり」することになります。
そこで使うのが「表現技法」なのですね。
「彼が来たのだ。」よりも、「来たのだ、彼が。」とすると、より強く印象に残ります。
筆者は、読者に主題を伝えるために、表現技法を使ったのです。
逆にいうと、表現技法の使われている場所を見つければ、そこが主題である可能性が高いのです。
主題にたどり着くために、表現技法を糸口のひとつにしてみましょう!

作者の視点に立つ!
詩を書いた作者が、どんな立場で、何を見て、どのような気持ちになっているのかをつかみましょう。
作者の視点に立つことができれば、作者が表現したかった主題も見えてくるのは当然ですね。
中学入試で出題される詩の作者は、大人であることがほとんどです。
読解するのは、11歳〜12歳の小学生ですから、大人の視点に立つことはなかなか難しいものです。
ですから、前もって、大人とはどのような視点で物事を見るのかということに慣れておくのも手です。
例えば…
・肉親の死に対する思い
・子供の成長を見守る目
・子供に対する申し訳なさ
・老いた自分の人生を見つめる
などは、小学生には未体験かつよく出題される主題です。

作者の心情に注目する!
中学入試で出題される詩は、作者の感じたことを言葉に乗せた「叙情詩」であることがほとんどです。
ですから、主題は直接作者の心情とつながることが多いです。
以前、物語の細部読解でお話しした、心情語のレパートリーを確認し、その詩には作者のどのような気持ちが表現されているのかをつかみましょう。

「どういうことに対して、どういう気持ちを持っているのか」まで理解できれば、完璧ですね!

以上のような内容を糸口として、詩に表現されている主題をつかみましょう!

それでは、入試問題を見てみましょう。

2016年灘中より
齋藤恵美子さんの「四つの海」からの出題でした。

内容を簡単に紹介すると…
「ホームの車椅子のお年寄りに/何がしたいか、たずねてみた」
から始まります。
その後、お年寄りたちは、口々に自分たちのしたいことを話しはじめます。
しかし、作者はずばりとこう言います。
「無いものを見せ合うことは、こころたのしく/そして、むごい」
また、地面を歩きたいと話すお年寄りのエピソードの後にも、こう言います。
「ここでは、地面さえ、欲望なのだ」
最後に、お年寄りたちは、「海が、ながめたいな」という言葉をきっかけとして、自らの思い出の様々な海を思い出していきます。
若狭の海・フィリピンの海・瀬戸内海…。
「行きましょう、地面へ降りて、道をきっぱりと歩きましょう」
そう述べた後に、最後は次のように締めくくられるのです。
「四つの海を、ひんやりと迂回して/椅子の車輪がすべっていく」

以上のような内容です。
大人であれば、この詩の本質に気がつけるのですが、小学生には難しいです。
なぜなら、老人ホームとは、ほとんどの小学生にとっては縁遠い場所だからです。
設問をもとに、主題に迫ってみましょう。

問二 ー線部2「無いものを見せ合うことは、こころたのしく、そして、むごい」について…
・こころたのしいのはなぜですか?
→直前に、様々な想像の世界を繰り広げるお年寄りの姿が描かれます。
想像は無限に広がりますから、どんなことでも思い描くことができます。
それが、「こころたのしい」ということですね。
・むごいのはなぜですか?
→しかし、想像は所詮想像でしかありません。
現実にならない想像は、同時に虚しさを伴います。
決して手に入れることができない想像を、筆者は「むごい」と表現したのです。

問三 ー線部3「ここでは、地面さえ、欲望なのだ」とありますが、その理由を答えなさい。
→「ここ」とは老人ホームのことです。車椅子に乗っている老人たちは、一人で自分の足を使って歩くことができないのだと推測できます。
つまり、「地面が欲望になる」とは、「自分の足で歩くことは、小学生には当たり前のことだが、老人にとっては夢になり得るのだ」ということを表現しているのです。
中学入試では、小学生に対して大人や老人の立場に立つことを求められているのだということを感じていただけたでしょうか。

最後の問を見てみましょう。
問五 ー線部5「四つの海を、ひんやりと迂回して/椅子の車輪がすべっていく」とありますが、これはどういうことをたとえていますか。
→最終連に使用された比喩表現の意味を問う問題です。
ここがまさにこの詩の主題が表現された部分なのですね。
表現技法を使い、他の部分よりも目立たせようという筆者の思いが伝わります。
この直前に、「行きましょう、地面へ降りて、道をきっぱりと歩きましょう」とあり、希望を感じさせて終わるのかと思ったのですが、最終連では「ひんやりと迂回して」や「椅子の車輪がすべっていく」と、マイナスの表現や、やはり車椅子に乗るしかない老人の姿が描かれるのです。
この仕掛けに気がついた受験生は、ミスリードに引っかからず、正しい選択肢を見つけることができるのです。
答えは「老人たちがそれぞれの思い出にひたっていた自由で豊かな時間から、車椅子に頼らなければならない現実に戻っていくこと。」となるのですね。

入試問題とは、受験生の選別を目的としています。
つまり、受験生の誰もが正解できる問題は、意味を成しません。
ですから、「四つの海」のように、受験生の生活からは遠いと思われる状況の詩を出題することで、理解できる子を選別しているのだと考えられます。
超高齢社会の日本。それでいて、核家族化が進んでいる社会。
君は、そのいびつさに目を向けたことがあるか。
そして、老人が感じる寂しさに思いを馳せたことがあるか。
この灘中の詩の出題は、受験生にそう問いかけているのですね。

いかがでしょうか?
詩とは、状況が省略されているため、慣れていないと太刀打ちできないことも多いです。
「表現技法に注目する!」
「作者の視点に立つ!」
「作者の心情に目を向ける!」
以上三点を糸口として、詩の本質に迫っていただければと思います!

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皆様とお子様が、笑顔で中学入試を迎えられますように。

お助け中学入試国語 ゆり