ゆりのお助け中学入試国語!

「勉強のしようがない」と言われがちな国語。そんな国語のお悩みを、全て解決!

漢字の書き取り「問題のレベルを見抜こう!」ー塾で教える解法、全部見せますー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

漢字の書き取り問題のレベルを見抜こう!

これまで12回にわたって、選択肢問題・抜き出し問題・記述問題と、読解問題のレベル設定のお話をしてまいりました。
入試問題とはいえ、全てが難しい問題というわけではありません。
中には、その学校を受験する90%以上の受験生が正解するような問題もあるのです。
大切なことは、レベルの問題を確実に合わせること。
そして、レベルの問題には、よっぽど自信がある場合以外は手を出さず、レベルの問題を一問でも多く合わせること。
以上2点をきちんと意識して対策をした受験生に、合格が待っているのです。

さて、今回は「漢字の書き取り問題」です!
漢字の覚え方については、以前の記事でも触れました。

www.otasukekokugo.com
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漢字の書き取りは、「大嫌いだ!」という子が多いです。
同じ漢字を何回もノートや漢字ドリルに写す、機械的な作業…。
反復の先にその字が肉体化することも否定はしませんが、それだけでは単に一文字・一単語を覚えるだけにとどまりがちです。
しかし、漢字の成り立ちを理解した上で、「論理で覚える」ことをした子は、その単語を身に付けるだけでなく、知らない言葉でも応用して正解を導き出すことができるのですね。

入試問題の漢字にも、レベルのものもあれば、のものもあります。
塾で学習する漢字ドリルを一通り身に付ければ、レベルは正解することができるようになります。
レベルは、どれだけ学習した子でも初見の場合があるので、論理的に漢字を乗せる訓練をしておく必要があります。

漢字の書き取り問題のレベルはどう決まる?

それでは、漢字の書き取りのレベルはどう決まるのでしょうか?
f:id:masa2001to2002:20170830131642j:plain
この表は、漢字の書き取り問題のレベルを確定するときに私が使用しているものです。
が最も易しく、が最も難しい問題ということです。
次に、項目ごとの説明をします。
「生活近」…その言葉が、小学生の生活の中によく出てくる場合。
「生活遠」…その言葉が、小学生の生活からは遠く、あまり日常では目にかからない場合。
「同音訓少」同音異義語・同訓異字が少ない場合。
「同音訓多」同音異義語・同訓異字が多い場合。
「推測〇」…その言葉が、小学生の生活とは縁遠いとはいえ、文脈から漢字の推測がしやすい場合。
「推測×」…その言葉が、小学生の生活とは縁遠い上に、文脈から漢字の推測もしにくい場合。

以上のような点から漢字の書き取り問題を分析し、問題をADの四つのレベルに分類するのです。
は90%の受験生が正解するもの。
は70%の受験生が正解するもの。
は40%の受験生が正解するもの。
は正答率が20%を切るもの。
このように問題にレベルをつけると、テスト全体の正答率の予測を立てることができます。
例えば、ADまで、それぞれ5点の問題を5問ずつ用意すると…
→5点×5問×90%=22.5点
→5点×5問×70%=17.5点
→5点×5問×40%=10点
→5点×5問×20%=5点
となり、予測正答率は55点となるわけです。

入試問題に当てはめてみよう

中学入試の漢字の書き取りには、二種類の出題方法があります。
一つは、物語文・論説文などの素材文の中で使われている言葉を書きとらせるもの。
もう一つは、独立した大問を用意し、独自に漢字の書き取り問題を作るもの。
レベルの問題は、後者の方が作りやすいです。
素材文の中に、偶然にも、「小学生の学習配当漢字を使っていて、それでいて小学生の語彙レベルを超えている」という都合のいい言葉がそうそうあるわけではないので、当然と言えば当然ですね。
ですから、前者の出題方式を取る灘中学校は、漢字の書き取り問題のレベルはそれほど高くありません。レベルAの問題なども多いのが、意外に思われるかもしれません。
灘中学校に次ぐ、関西の最難関男子校の一つである東大寺学園中学校は、後者の出題方式を取っているため、その難度は全国でも最高レベルです。

このような、出題レベルと出題傾向を知っておくと、次のような対応ができます。
「自分の受験する学校は、文章の中の言葉を漢字に直させる問題が多いから、それほど難しいものは多くない。だからこそ確実に得点しなければならない」とか、「この学校の漢字の書き取りは、独立した大問として作られており、同音訓が多いものがある。ふだんからどの漢字を使うかを文脈から判断する意識を持とう」といったような、傾向と対策の分析につながるということですね。

それでは、具体的に入試問題を使用して、漢字の書き取り問題のレベルを見ていきましょう。

レベル

・2017年灘中より
→欠点をバネにした偉人たちのギャクテンゲキ(逆転劇)
→祖母の家のヤネウラ(屋根裏)
→日がれる(暮)

どの言葉も、小学生の生活と近い言葉です。
「目にしたことがある」レベルを超えて、「使用したことがある」子も多いでしょう。
また、どの言葉も同音異義語・同訓異字は多くありません。
灘を受験する子だけではなく、一般的な中学受験生であれば十分正解できる問題だといえます。

レベル

・2013年四天王寺中より
→地位をカッコたるものにしていった(確固)
・2014年東大寺学園中より
→もどってきたお金をジュリョウした(受領)
・2013年東大寺学園中より
→君とぼくはムニの親友だ(無二)
・2017年六甲学院中より
→病状がカイホウに向かう(快方)

「確固・受領・無二」については、同音異義語はありませんが、小学生の生活からは遠いです。しかし、文脈から漢字を推測しやすいため、レベルとなります。

また、「快方」については、中学受験生であれば一度ならず目にしたことがあるはずの問題です。ですから、生活とは近いと考えられます。
しかし、「カイホウ」には「開放・解放・解法・会報」と、同音異義語が多いため、ひっかかる受験生もいるでしょう。ですから、レベルとなります。

レベル

・2016年洛南高附中より
チョウドヒンにしても床の間の置物にしても(調度品)
・2017年清風南海中より
→好評をハクスル(博する)

どちらも、小学生の生活からは遠いです。同音異義語・同訓異字はそれほど多くありませんが、文脈からの漢字の推測は困難です。よってレベルとなります。

レベル

・2015年東大寺学園中より
シンシュの気質に富んだ人(進取)
・2013年東大寺学園中より
→あの人はすぐ上司にチュウシンする(注進)
・2017年東大寺学園中より
→直情ケイコウな性格(径行)

先ほども述べたように、東大寺学園は独立した大問を用いて漢字の書き取りをさせるため、難度が非常に高いです。
どの問題も、「生活から遠い」「同音異義語もいろいろある」「推測も不可能に近い」ということで、レベルはとなります。偶然知っていたか、それぞれの読み方の漢字をとりあえず乗せてみたら正解したといった感じでしょう。

おわりに

いかがでしょうか?
単に漢字の書き取りと言っても、レベルは様々なのです。
まず必要なことは、塾のテキストを用いて、基本的なレベルAやBのものを確実に身に付けること!
その上で、文脈から漢字を推測して、知らない言葉でも正解することができるレベルCやDの問題を少しでも正解すること!

以上二点を意識して問題分析をしましょう!


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お助け中学入試国語 ゆり

記述問題part4「問題のレベルを見抜こう!」ー塾で教える解法、全部見せますー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

記述問題のレベルを見抜こう!

これまで、「記述問題はカレーライスだ」「材料を探そう」「記述を採点するときは…」と題し、記述問題とはどのような仕組みで作られ、確実に得点するには何に気をつけるべきかについてお話ししてきました。
今回は、記述問題の難易度についてのお話をしたいと思います。

これまでにもお話ししてきたように、我々が国語のテストを作るときは、様々な形式の問題を、様々な難易度で用意するように心がけます。
なぜなら、入試までにできるだけ多くの問題のパターンに親しんでもらうことで、対応力を高めておきたいからです。

読解問題を解くときは、
①答えの内容を推測する
②答えの場所を推測する
③本文から使えそうな場所をチェックする
④形式(記述・抜出・選択)に合わせて答える

という流れで考える必要があります。

テストを作る我々は、受験生がこの①〜④のステップを正しく踏めるような作問をします。
その際、難しい問題にするときは、①〜④のどこかに落とし穴を用意するわけですね。
落とし穴を増やせば、当然正答率は下がります。
記述問題で正解する力をつけるには、その問題のどこに落とし穴があり、どのくらいのレベルなのかを知った上で、間違えた問題の直しをしていく必要があるのです。

記述問題のレベルはどう決まる?

f:id:masa2001to2002:20170828035742j:plain
この表は、記述問題のレベルを確定するときに私が使用しているものです。
Aが最も易しく、が最も難しい問題ということです。
次に、項目ごとの説明をします。
「材料少」…答えの材料になる場所が、1~2か所しかない場合。字数制限も少なめになる。
「材料多・近」…答えの材料になる場所が、3か所以上あるが、その場所が傍線部から比較的近くにある場合。
「材料多・遠」…答えの材料になる場所が、3か所以上あり、その場所が傍線部から比較的遠くにちらばっている場合。
「自分で考える」…本文を参考に、自分の体験などを書く場合。本文をもとに考えやすければレベルは下がるが、そもそも内容が難しい場合はレベルが上がる。
「変化小」…見つけた材料をほぼそのまま使える場合。
「変化大」…見つけた材料を言い換えたり、まとめたりしないと使えない場合。

以上のような点から記述問題を分析し、問題をADの四つのレベルに分類するのです。
Aは90%の受験生が正解するもの。
Bは70%の受験生が正解するもの。
Cは40%の受験生が正解するもの。
Dは正答率が20%を切るもの。
このように問題にレベルをつけると、テスト全体の正答率の予測を立てることができます。
例えば、ADまで、それぞれ5点の問題を5問ずつ用意すると…
A→5点×5問×90%=22.5点
B→5点×5問×70%=17.5点
C→5点×5問×40%=10点
D→5点×5問×20%=5点
となり、予測正答率は55点となるわけです。

入試問題に当てはめてみよう

この方法は、入試問題を分析する際にも役立ちます。
「自分の受験する学校は、字数の多い記述問題が多いが、本文中の表現をそのまま使えば良いものが多いから、確実に合わせよう。」とか、「この学校の記述問題は字数制限こそ少ないが、自分の言葉でまとめ直すものが多いから、気をつけよう」といったような、傾向と対策の分析に繋がるからです。
それでは、具体的に入試問題を使用して、記述問題のレベルを見ていきましょう。

レベル

2016年龍谷大付平安中より
問3―線②「それ」とはどのようなことですか。文中のことばを使って二十字程度で答えなさい。句読点なども字数に数えます。

→オーソドックスな指示語の問題です。
また、字数制限が二十字程度という条件から、材料が一つしかないとわかります。
ですから、傍線部の直前にある部分の主語と述語に、最低限の修飾語を足して解答を作りましょう。
答「植物は外界の光を認知していないということ。」
それほど難しく考えずとも、指示語の直前を写すだけでほとんど模範解答通りになります。
よってレベルはとなります。

レベル

2016年関西大倉中より
問六 ―線「駅伝をやりたいと思った動機」とありますが、何ですか。六十五字以内で説明しなさい。

→字数が六十五字以内とあるので、必要な材料は三つはありそうだと推測できます。
「駅伝をやりたい」というプラスの気持ちになった理由となることを探すわけですから、その動機も当然プラス系の内容だとわかります。
傍線部の直後に「走ること自体が楽しい」という記述があり、これが材料であることはすぐにわかります。
しかし、これだけでは、どう膨らましても字数制限に及びません。
ということで、別のポイントを見つける必要があるとわかります。
しばらく読んでいくと、主人公が「テレビで見た、走りの速い少女にあこがれる」というプラスの記述があるので、ここを中心にまとめましょう。

答「実際に走って楽しかったことだけではなく、早く美しく走れる強い選手になって、テレビで見たあこがれの少女のようになりたいと思ったこと。」

材料は三つとやや多めではありますが、それぞれが傍線部から近い部分にあるため、見つけにくくはありません。よってレベルとなります。

レベルC

2017年大阪星光学院中より
問4―線部③「しかしこれだけでは…達成できる理由を説明できない」とありますが、「これ」以外にミナミの方が人間の販売員よりも好成績な売上を達成できる理由を、百字以内ですべて書きなさい。

大阪星光学院で必ず出題される、非常に字数制限の多い記述です。
百字以内と言われると、慣れていなかったり苦手だったりする受験生は戸惑うかもしれません。
しかし、これまでもお話ししてきたように、選択肢問題も抜き出し問題も記述問題も、「答えを本文中から探す」という点では同じ問題です。
見つけた答えを解答用紙に載せる時に、少しだけ対応が違うだけなのです。
百字以内という字数制限から、材料は五つ程度あるとわかります。
傍線部の次の段落から、アンドロイド販売員であるミナミの方が人間よりも売り上げが良い理由が書かれています。
ただし、一つだけ見つけて終わってはいけません。
ミナミがアンドロイドであると、人間とは違うどういう状況が生まれるか。
そして、その状況がどういう効果を生むか。
以上2点のセットを作っていきましょう。

アンドロイドに対しては断りやすい
安心して買い物ができる

アンドロイドはうそをつかない
信頼できる

アンドロイドは疲れず話しかけやすい
たくさん接客できる

以上三つのセットをまとめると、以下のようになります。

答「アンドロイドであるミナミだと断りやすく、安心して買い物ができ、うそをつかないという信頼感から買おうかなという気になる人が増え、またミナミは疲れず話しかけやすいので、人間より数多く接客できるから。」
材料は六つと多く、比較的傍線部から離れたところにありますが、それぞれの材料の変化の度合いは小さいため、レベルCとなります。

レベル

2017年神戸女学院中より
問二 ―線部②「あなたが読んでくだされば/心が活字の群れを〈詩〉に変える」とあるが、どのようなことを表しているか、五十字以内で説明しなさい。ただし、「作者」・「読者」という言葉を必ず入れること。その際、「 」はつけなくてよい。

→詩の記述問題は、そもそも本文で与えられる情報が少ないため、難度が上がりがちです。
「どのようなことを表しているか」という問い方ですから、傍線部を言い換えて説明する問題であるとわかります。
詩自体の理解も難しく、ほとんど自分の力で傍線部を言い換える必要があるので、難問であるといえます。
答「作者が真理を表現しようとつづった言葉の数々が読者の心に伝わることで、詩が完成するということ。」

「作者が真理を表現しようとつづった言葉」という部分は、詩の内容をかなり強く言い換えないと書けません。また、それが読者の心に伝わった時に初めて詩が完成するという主題に関わる内容は、完全に自分の中から言葉を生まなければなりません。よってレベルはとなります。

おわりに

いかがでしょうか?
記述問題と一口に言っても、90パーセントの受験生が正解できるものから、20パーセント以下しか正解できないものまで、様々です。
中には、傍線部の近辺をそのまま書けばほとんど正解になるようなものも多いのですね。
ですから、記述問題は全て後回し!というのはもったいないのです。
まずは、問題をしっかり読み込んで、答えるべきことを明確にすること!
次に、答えるべき内容がわかれば、それが本文のどこにあるかを考えること!

記述問題が苦手な方も、以上のような点を意識しながら学習することで、レベルAやレベルBの記述問題は楽に正解できるようになりますよ。
記述問題マスターに向けて、がんばりましょう!

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お助け中学入試国語 ゆり

記述問題part3「記述を採点するときは…」ー塾で教える解法、全部見せますー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

記述の採点は大変だ!

今回は、記述問題の採点の現場からお話ししたいと思います。
前回、講師の目線でいえば、選択肢問題や抜き出し問題よりも記述問題の方が解くのが楽だとお話ししました。
これは、ある程度問題を解きなれた人であれば、すぐに理解していただけることだと思います。
選択肢問題では、「だいたいこの辺りが答だろう」と考えた内容と一致しているものを探し、落とし穴にひっかからないよう注意して判断するのが大変ですし、抜き出し問題ではそもそも考えた内容があるべき場所に見つからないこともあります。
しかし、記述問題であれば、自分が答えになると考えた内容をそのまま書けばよいわけです。以前からお話ししている、以下のような読解のステップ。

①答えの内容を推測する
②答えの場所を推測する
③本文から使えそうな場所をチェックする
④形式(記述・抜出・選択)に合わせて答える

選択肢問題や抜き出し問題と比べると、記述問題は、上記の④のステップが楽だということなのですね。

しかし、これが採点をする側の目線になると、記述問題の評価が変わります。
たしかに、受験生が本当の意味でその質問に対する答えが理解できているかを問うためには記述問題が一番です。
選択肢問題であれば、4~5択ですから、25~20%の確率で「なんとなく」正解できてしまいます。
また、抜き出し問題であれば、「~字でそのまま抜き出せ」という条件から、「~字で答っぽいところ」を機械的に探すだけで正解する場合があります。
記述問題は、見つけた材料を自分の言葉で再構成するため、本当に理解できたかどうかを確かめることができるのですね。
選択肢問題であれば、採点は楽です。
模範解答通り、ア~エの記号と合っていれば〇、違うものを書いていたら×です。
抜き出し問題も同じようなものです。
模範解答と、一言一句同じでなければ×をつけられます。
記述問題は、受験生が見つけた内容をそれぞれ自分の言葉で表現してくるため、採点者は、受験生が書いてきたものをしっかりと読み込まなければなりません。
これが大変なのです…。
採点には公平性があることが大前提になりますから、一文字一文字読み込んで、採点に間違いがないかどうかをチェックする必要があります。
中には、「いったいこの子は何を言いたいのだ?」と言いたくなるような、読みにくい答えもあるのです。
しっかりと構成された、模範解答に近いものばかりであれば楽なのですが、実際はそうではありません。
テスト採点の現場では、何百枚もの答案を前に、頭を抱える先生たちの姿を見ることができるのですね。

しかし、受験生に国語力があるかどうかを本気で確かめたいと思っている最難関校では、必ず練りに練った記述問題が出題されます。
それは、中高6年間の先の大学入試を見据えてのことです。
東京大学京都大学など、最難関大学では、記述問題ばかりが出題されます。
小学生の時点で、きちんと題意を読み取り、表現できる子であれば、最難関大学の現代文に立ち向かえるということでしょう。
採点の大変さは置いておき、きちんと表現できる子がほしい!という、中学・高校の先生方の思いの表れだと思います。

「国語は答えが一つじゃないから…」と言われることがあるのは、記述問題がある故ですね。
しかし、選抜が目的であるテストである以上、記述問題であっても答えは必ず一つなのです。

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左にあるように、模範解答と自分の答えが全くかぶっていない場合は問答無用で×です。
しかし、右の図のように、模範解答と自分の答えに共通点が少しでもある場合は、部分点をもらえるのです。

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右の図のように、模範解答とぴったり同じ内容を書けば当然〇になります。
しかし、左の図のように、模範解答の内容を含んでいれば、多少別の表現が入っていても〇になるのですね。
今回は、「模範解答とのズレを生む原因を前もって知っておこう」ということが目的なのです。

間違いの種類を知ろう

というわけで今回は、採点の現場で、答案に対して我々がどのように朱を入れているかをお話ししたいと思います。
どういうことをやらかしてしまうと、どれくらい減点されるのか。
受験生は、意外とこれを知らないまま問題を解いているのです。
採点基準を前もって知っておけば、ミスを回避することができます。
見えている落とし穴にわざわざひっかかることはないですからね。
しっかりと頭に入れていきましょう!

条件を守らない

まずは、「条件無視」です。
いろいろなパターンがありますから、まずは注意深く問題を読みましょう。
条件を無視してしまうと、それまでがどんなに正しいことを書いていても、一発で×にされ、部分点すらもらえないことがあります。要注意です!

・字数制限を無視している
→制限を超えるのはもちろんアウトです。
模範解答は、字数制限とほぼ同じ文字数で書かれます。ということは、その制限よりも大幅に少ない字数で書いてしまうと、そもそも書くべき内容が入っていないということになります。

・「~という言葉を使って」無視
→記述の核となるキーワードを問題で述べてくれているのに、それを使わない場合は一発アウトです。

・「本文中の語句を使って」無視
→このような表現が問題中にあるということは、「本文の中に、模範解答として使えそうな部分がそのまま存在しますよ」という作問者からのメッセージです。
これを、自分独自の言葉で表現してしまうと、×にはなりませんが、減点の可能性が高まります。

・「具体的に」無視
→記述問題の解答は抽象的にまとめて書くことが普通です。
そのほうが、端的に言いたいことを表現できるからです。
ですから、本文の具体性を保って記述してほしい場合、作問者は「具体的に書け」などの文言を入れます。それを無視してまとめて書くと、大幅な減点となります。

内容が足りない

そもそも、採点基準で用意された内容が書けていない場合。
模範解答が「普段は怒りっぽい先生が、今日は優しく、驚いた気持ち。」であるのに、
作った答が「今日は先生が優しかったため、驚いた気持ち。」であれば、前提となる通常の先生の姿が書かれていないため、一ポイント減点となります。
前回の記事でも書いたように、一ポイントは20字程度になるという目安と字数制限から、模範解答には何ポイントの採点箇所があるかを推測し、その数だけポイントを探すように心がけましょう。
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口語表現・俗語を使っている

「うざい」「きもい」「なので」「~とか」「~じゃなくて」などの表現は、すべて減点対象となります。
書き言葉に慣れていない子はついこのような表現を多用しがちですから、注意が必要です。

言い換え前後の同表現

―線部に「身近な自然破壊を防ぐ必要がある」とあり、それを言い換える問題であるにも関わらず、作った解答に「身近な自然破壊を防ぐ必要がある」が入っている場合、言い換えをしていないため、減点となります。
この場合、「自然環境を守る」と反対に言い換えたり、「身の回りの自然環境が壊されることを阻止する」などと別表現にする必要があります。

比喩表現をそのまま使う

「私の心はまるでしぼんだ風船のように…」のように比喩表現が使われている文章中の部分を材料として使う必要があるとき、調理せずにそのまま書いてしまうと減点になります。
この場合、「落ち込んでしまい」といった直接的な表現に言い換える必要があります。

主述のねじれ

「太郎の夢は、しっかりと練習をすることで、プロ野球選手になりたい気持ち。」のように、主語と述語の対応がなされていない場合です。
必要な材料は全てそろっていても、減点されます。

ポイント同士の論理関係のズレ

「当日雨が降ったので、運動会が中止になり、残念だったから。」と答えるべきところを、
「運動会が中止になったため、雨が降り、残念だったから。」のように答えてしまうパターンです。
材料はそろっていても、全く意味不明になることが多く、×になる可能性が高いです。

文末表現のミス

どのような気持ちですか?→~な気持ち。~うれしさ。など
どういうことですか?→~こと。
なぜですか?→~から。
どういう性格ですか?→~な性格。
記述問題であれば、とりあえず「~から」と答えてしまう子が多いです。
減点の度合いは小さいですが、注意すれば防げるミスです。

誤字脱字

「見れる」などのら抜き言葉や、漢字の表記ミスなどがこれに当たります。
一か所あたり何点減点のように決められていることが多く、せっかくすべての材料をそろえてうまく構成しても、誤字脱字の累積で×になってしまうこともあります。

記述問題への対策

以上のような減点ポイントがあるのですが、このような落とし穴にひっかからないようにするためには、どうすればよいのでしょうか?
それは、「大人の目を通す」ことです!

模範解答は大人が作っています。しかし、解答を作るのは小学生です。
両者の間には、埋めがたい語彙力のギャップがあります。
「これは、表現は違うけど内容は同じだから〇」とか、
「この言い方は日本語としておかしい」ということは、大人と比べるとまだ語彙力の乏しい小学生には判断が難しいです。
ですから、次のような順序で学習を進めていただければよいのではないでしょうか。

①記述問題を解くとき、使用した本文の場所に線を引いておく。
②採点のとき、模範解答の内容が本文のどこにあるかをチェックする。
③自分が使った場所と、模範解答の場所が合っているかを確かめる。
④材料がズレていた場合、どう考えれば模範解答の材料にたどり着けるか、理由を考える。
⑤保護者の方もしくは担当の先生に、採点の仕上げを頼む。

このような正しいステップで採点をしていけば、だんだんと正しい日本語が身についていきますよ。

おわりに

いかがでしょうか?
記述問題は、とにかく何を書いたらよいのかがわからないと言う子が多いです。
おそらく、算数のように正解ががちっと一つに決まるのではなく、ばらつきがあることが原因だと思います。
しかし、正解にばらつきがあるということは、裏を返せば答えとして認めてもらえる範囲が広いのだということになるわけです。
ですから、記述問題だから、字数が多いからといって怖がらずに、どんどんと答えを作っていき、今回お話ししたような減点対象になっていないかを、大人の方と協力して探していただきたいと思います!
記述マスターに向けて、がんばりましょう!


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お助け中学入試国語 ゆり

記述問題part2「材料を探そう!」―塾で教える解法、全部見せます―

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

いい料理は良い材料から

前回は、「記述問題はカレーライスだ!」という題名で、記述問題の仕組みをお話いたしました。
記述問題も選択肢問題も抜き出し問題も、基本の解法は同じなのです。
大事なことは、「材料を集めること」と「集めた材料を正しく組み合わせること」の二点なのですね。
ただし、まずはどちらが大事かと言われれば、「材料を集めること」なのです。
カレー粉やスパイスがなければ、カレーは絶対に作ることができません。
中心となる材料が何かを見抜くこと。
記述問題の基本は、これなのです。

ですから、今回は、いかにして正しく材料を見つけるかということに焦点を当ててお話をしたいと思います。

解答の中心を見抜こう!

まずは、次の問題をご覧ください。

問「彼女はその行動に眉をひそめた」とありますが、この時の彼女の気持ちを40字以内で答えなさい。

→さて、この問題で出題者が答えてほしい「解答の中心」とは何でしょうか?
それは、「この時の彼女の気持ち」です。
「眉をひそめた」とは、「不快感」を表す心情表現です。
ですから、答えの中心は「不快な気持ち」とすればよいのです。
ですが、これだけでは答えにはなりません。
条件に「40字以内」とあるので、なぜ不快になったのかの理由をつけたすと、「不快」であることの説明ができた状態になります。
不快になった理由ですから、マイナスの出来事があったはずですね。

模範解答は「友人であると思っていた智子が、自分のことを裏切っていたことを知り、不快な気持ち。」となるわけです。

しかし、「友人であると思っていた智子が、自分のことを裏切っていたことを知ったから」だと、理由は書いていても、答えの中心に触れることはできていません。
答の中心に触れることができていなければ、採点基準によれば、×になる可能性もあるということです。
このように「問われたことに対する答えの中心を決め、その中心になる内容を補強する説明を加えていく」という方法で、解答を作り上げるやり方を身に付けましょう!

2017年甲陽学院中より

問五 ―④「見える人にとって、そのような俯瞰的で三次元的なイメージを持つことはきわめて難しいことです」とありますが、その理由を説明しなさい。
→イメージを持つことが難しいというマイナスの理由を書くわけですから、答えはマイナスの内容になると推測できます。
また、傍線部の直前に「けれども」とあり、話題が逆転しているため、理由は傍線部の後にあると推測できます。
以上のことから、同じ段落の最後にある「自分がどんな地形のどのあたりを歩いているなんて、想像する余裕はありません」という部分が理由の中心であるとわかります。
しかし、これだけでは模範解答とはなりません。
なぜ自分がどんな地形のどのあたりを歩いているかを想像できないのかの説明がわからず、説明不足と判定されるのです。
では、なぜ想像できないと考えられるのか。
見つけた部分の直前を読むと「見える人には目に様々な情報が飛び込んでくるため、意識が奪われる」とあり、この部分を足すと完璧な説明となるのです。
模範解答は「見える人は目に飛び込んでくるさまざまな情報に意識を奪われてしまうので、自分が歩いている場所の地形について想像する余裕がなくなるから。」となります。

字数制限は敵ではない!

皆さんは、「100字以内でまとめなさい」という条件を目にしたとき、どう思われますか?
「面倒くさい!」
「書きたくない!」
「とりあえず飛ばして、楽そうな選択肢問題からやろう!」

以上のように思われるかもしれませんね。
しかし、実はそれは大きな間違い!
我々国語講師が本気でテストを受けるときは、このような字数制限の多い記述問題が出題されたときは、「しめしめ…」という感じで、喜び勇んで答えを作るのです。
100字以内で書けというこの問題、配点はどのくらいになるでしょうか?
1点2点ということはなさそうですね。
100点満点であれば、8点~10点はもらえそうです。
ほかの選択肢問題が3点~5点ほどしかないのに、10点の問題とは非常に大きな問題ですね。
なぜ配点が高くなるのか?難度が高いからでしょうか?
実は違うのです。
「配点が高いのは、その1問の中に採点ポイントが多いから」というだけなのです。
難易度とは何の関係もありません。
裏を返せば、「採点ポイントが高いということは、点数を取りやすい」ということにもなるのです!
お子様は、字数制限の多い記述問題に当たった時、とりあえず飛ばして後回しにして、結局時間が足らずに空欄のままになっていませんか?
それは、宝の山を見過ごしている行為に他ならないのです。

次に「相手に何かを伝える」という行為をするときの必要字数について考えてみましょう。
例えば、晩ご飯のおかずを相手に問うときは、つぎのように言うわけです。
「あなたは今日の晩ご飯に何を食べたい?」(18字)
ここから、一つでも情報を抜くと、何のことを伝えたいのかがわかりにくくなっていきます。
つまり、相手に何かを伝えるときに必要な字数は、20字程度ということがわかります。

ということは、100字以内で答えよという記述問題であれば、100÷20で採点ポイントが五つあるだろうという推測ができるのです。
最初に採点ポイントが五つあるとわかれば、何をどれだけ書けばよいかの推測もしやすくなるのですね。

以上二点から、字数制限が多いからといって、すぐに撤退をしてしまうのはもったいない!ということがお分かりいただけると思います。

2017年東大寺学園中より

(八)―線部⑥「壁画は、記憶のトリガーとしても大いに役立っていた」とありますが、どういうことですか。八十字以内で説明しなさい。

→八十字以内で説明するということは、80÷20という式から、採点ポイントは四つあると推測できます。
また、「どういうことですか」という言い換えを求められたわけですから、傍線部を分割し、それぞれを別の表現にすればよいとわかります。

「壁画は、記憶のトリガーとして大いに役立っていた」には「も」という言葉があることから、壁画には別の役割もあるとわかります。
つまり、解答の型は「記憶のトリガーとして役立つ以外の役立ち」を40字以内で説明し、「記憶のトリガーとしての役立ち」を40字以内で説明したものになるだろうと推測できます。
傍線部の直前の部分から、壁画を描くことが「情報のアウトプット」であり、それが「楽しい」ということが書いてありました。
ここから、採点ポイントは以下のようになると推測できます。
①壁画を描くことは情報のアウトプットをすることであり
②壁画を描くことはそれだけで楽しいことである

次に、記憶のトリガーとして役に立つとはどういうことかを説明しましょう。
傍線部の直後に「壁画を描くことで思い出すことができる」とあるので、その近辺を使いましょう。
③生活のあちこちに描いた壁画を使うことで
④情報を思い出すきっかけにすることができる

以上①~④をまとめれば、次のような模範解答を作ることができます。

「壁画を描くことで情報のアウトプットをするという行為はそれだけで楽しいし、壁画を生活のあちこちにちりばめ、得た情報を思い出すきっかけとして利用していたということ。」

記述の型を身に付けよう

心情の記述問題をもとに、記述の型について考えてみましょう。

f:id:masa2001to2002:20170803154436j:plain
以前、物語の授業の作り方についてお話しした時、上記のような「心情の流れ」の図を載せました。
の「理由となる出来事」は20字程度で説明することができます。
の「心情(気持ち)」は、「うれしい気持ち。」や「悲しい気持ち。」のように、10字程度で答えることができます。

ということは、気持ちを答える記述問題の場合は、最小で30字~40字以内で説明をすることができる計算になります。

入試問題を使って

・2017年樟蔭中より
問九 ―線⑦とあるが、その時の気持ちを四十字以内で説明しなさい。
答「父親の期待にこたえようと練習したにもかかわらず再び失敗し、くやしい気持ち。」

・2016年天理中より
(8)―線部⑥「押野とのたのしい思い出を、もうこれ以上ひとつも増やしたくなかった」とありますが、それはなぜですか。理由を四十字以内で答えなさい。
答「これ以上楽しい思い出が増えると、転校するとき別れがよりつらくなってしまうから。」

以上のような形になります。
これが、字数制限が増えると、次のような形になります。
六十字以内だと…ため、ので、な気持ち。
八十字以内だと…ため、な気持ちが、『きっかけ』によって、ので、な気持ちになった。
以上のように、与えられた字数制限から、必要とされている内容が推測できるのですね。

・2017年奈良学園中より
3 ―線②「手にしていた残りの半分も、口を動かしながらそれをじっと見ていたエイダンにあげた」とありますが、このときの「ぼく」の心情を六十字以内で説明しなさい。
答「エイダンが甘えた声を出していたことから、彼が母親にかまってもらえずさびしいのだとわかり、かわいそうにおもっているから。」

・2017年奈良学園登美ヶ丘中より
8 ―線⑧「またちょっと涙が出た」とありますが、それはなぜですか。九十字以内で説明しなさい。
答「見た目が気持ち悪い生き物であるアメフラシと重ねられ、あだ名をつけられて悲しかったが、『きっかけ』ぱんちゃんがアメフラシは頭が良いと言ってくれ、自分も認められているように感じてうれしかったから。」

おわりに

いかがでしょうか?
記述問題を解くためには、まずは材料集めが大切だということ!
そのためには…
「答えの中心を探すこと!」
「字数制限から採点ポイントを見抜くこと!」
「記述の型を推測すること!」

以上三点の考え方をもとに、「どのような内容をどのくらい探すか」の目安をつけて、お子様と一緒に記述問題を一つ一つ分析していってみてくださいね!
そうすれば、きっと記述問題が得意になりますよ!


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お助け中学入試国語 ゆり

記述問題part1「記述問題はカレーライスだ!」ー塾で教える解法、全部見せますー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

みんなが苦手、記述問題!

これまでは、選択肢問題と抜き出し問題についての解法をお話ししてきました。
もしかすると、皆さんにとっては「お待たせ!」だったかもしれません。
今回からは、いよいよ「記述問題」の解法についてお話ししたいと思います。
講師をしていても、一番多いのが「記述問題が書けない」というご相談であるように思います。

しかし、少し考えてみて頂きたいのです。
お子様は、本当に記述問題だけが苦手なのでしょうか?
実は、他のところに原因があるのではないでしょうか?

今回は、そこのところを掘り下げてみたいと思います。

読解問題の正しいプロセスとは?

以前の記事でも述べたのですが、基本的には「記述問題だけができない」ということは考えにくいです。
なぜなら、記述問題に限らず、読解問題とは、次のようなプロセスで解きほぐしていくものだからです。

①答えの内容を推測する
②答えの場所を推測する
③本文から使えそうな場所をチェックする
④形式(記述・抜出・選択)に合わせて答える

上記の③までのステップを踏むことができれば、あとは見つけた場所を使ってまとめるだけなので、満点は取れずとも、部分点は間違いなく貰えるのです。
しかし、記述問題で、答えを書いているのにバツがついたり、白紙になったりしている場合は、④だけができないというよりも、①〜③の活動が正しく行われていないことが多いのです。

ですから、記述が苦手なお子様には、問題をしっかりと読み込んだ上で、①~③の手順を、まるで自転車の練習をするときに後ろを持ってあげて走らせるように、一つ一つ確認してあげましょう。
「どんな内容が答えになりそう?プラスか?マイナスか?」
「だいたいどのあたりにありそう?はじめかまんなかか終わりか?」
といった質問をして、誘導していくということです。

記述問題はカレーライスだ!

一読すると「なんのこと?」となるこの題名。
ですが、指導をしている時にこの話をすると、しっかりと自分の書いたものの弱点をつかんでくれるので、おすすめなのです。

2017年東大寺学園中の記述問題をもとに考えてみましょう。

(八)―線部⑧「光の先に手を振りながら、わたしは役者になったつもりでつぶやいてみる」とありますが、このときの「わたし」の気持ちを一〇〇字以内で説明しなさい。

答 「かつては、陸上選手としての将来が見えなくなってしまい、絶望していたが、彩乃が自分を演劇部に誘ってくれて、新しく夢中で取り組めることを発見し、失った自信を取り戻すことができたので、彩乃に感謝する気持ち。」(一〇〇字)

東大寺学園中の物語では典型例とも言える、主人公の成長・回復を描いた文章でした。
設問も、文章全体を通した主人公の心情変化を答えさせるもので、こちらも典型的だと言えます。
採点のポイントは…

①かつてのマイナスの自分の姿
②そのときのマイナスの心情
③心情変化のきっかけ
④変化後のプラスの自分の姿
⑤そのときのプラスの心情

大きく分けると、以上の五点であろうと推測できます。
物語の授業の作り方でお話しした、以下の図のような型で書けばよいということです。
f:id:masa2001to2002:20170803154428j:plain

ただ何となく書いていると、50字くらい書いたところで手が止まってしまうでしょう。

まずは、「気持ちを説明しなさい」という問題であるにも関わらず、制限字数が100字と多めであることから、「かつての自分」を対比的に記述することで、答えとなる気持ちをより強めればよいという発想をしましょう。
そこから、上記のような①~⑤の流れで書けばよいというアウトラインを作り上げ、①~⑤に合う材料を探せばよいのです。
カレーでいうところの、「玉ねぎ・ニンジン・ジャガイモ・肉・米・水・ルウ」がそろった状態ということですね。

次に、それを正しい順番でまとめます。
①~⑤の順番がずれてしまうと、説明の流れがうまくいきません。
カレーでいえば、「まず肉を炒めてうま味を閉じ込め、玉ねぎをきつね色になるまで炒めたうえで、ニンジンを加えて、ジャガイモは崩れやすいから最後に!」といった順序で調理する必要があるということです。

少し説明が足りない場合

例えば、ニンジンやジャガイモが入っていないカレーライスが出てきたら、皆さんはどう思われますか?
人によっては、少し寂しいと感じられるかもしれませんね。
でも、「金を返せ!」とか「作り直せ!」とまでは思わないでしょう。
たいていの人は、黙って完食しますよね。

これは、記述問題で言うなれば、「核となるポイントや、そのポイントの説明の中心は押さえられている」
という状態です。
格となるポイントやその説明の中心はあるけれども、あと少し説明を足せば、何のことかがよりはっきりわかる場合です。

「かつては、自分がやりたいことができなくなり、絶望していたが、彩乃が自分を演劇部に誘ってくれて、新しく夢中で取り組めることを発見し、失った自信を取り戻すことができたので、彩乃に感謝する気持ち。」

→10点中8点は間違いなくもらえる答案です。
ここまで書くことができれば、十分合格圏内と言えるでしょう。
「かつては、自分がやりたいことができなくなり」と書いたのですが、これだけでは何のことかがわかりません。肉体的にダメージを受け、陸上ができなくなった結果、演劇という新たなステージを得たという流れがつかめていないかもしれないと採点者に判断されるかもしれません。

重要な情報が抜けている場合

例えば、ニンジンやジャガイモどころか、玉ねぎも肉も入っていないカレーが出てきたとしたら、皆さんはどう思われますか?
出店などではときどき見かけますよね、ほとんどルーばかりのカレー…。
食べられないことはないし、一応カレーだから文句も言えないし、でも少し残念…という感じだと思います。
減点の度合いはより強くなります。

「かつては、けがをしてしまったことにより、陸上選手として活躍することができなくなってしまったのだが、新しく夢中で取り組めることを発見し、失った自信を取り戻すことができたので、彩乃に感謝する気持ち。」

→10点中6点といったところでしょうか。
「感謝する気持ち」という締め方は上手なのですが、その感謝をより際立たせるには、かつての絶望を表現しておく必要があります。
核を成立させるために必要な説明の中心が無い状態です。
絶望の度合いが強ければ強いほど、回復した時の喜びは大きいということですね。
記述の苦手な子がここまで書いてくれば、もろ手を挙げて喜んであげる!という感じの解答です。
算数が苦手で、国語が得点源の子であれば、しっかりと突っ込んで指導しないと…という感じです。

順番がぐちゃぐちゃの場合

材料が全てそろったカレーでも、調理手順がぐちゃぐちゃだと、それはカレーとは言えなくなりますね。
生煮えの肉、固いニンジン・ぼろぼろに煮崩れしたジャガイモ…。
考えるだけで、おいしくなさそうです。

「彩乃が自分を演劇部に誘ってくれて、絶望していたのが、新しく夢中で取り組めることを発見し、かつては、陸上選手としての将来が見えなくなってしまったのに、失った自信を取り戻すことができたので、彩乃に感謝する気持ち。」

→3点もらえればラッキーという感じです。
たしかに、材料は全て入っています。
しかし、アウトラインを決めずになんとなく思いついたことを書いていったため、順序がぐちゃぐちゃになり、読みにくいことこの上ありません。
「誘ってくれて、絶望」あたりは、誤解が生じるようになってしまっています。
こんな答え、書かないだろう…と、大人であれば思うのですが、なかなかどうして、小学生は結構このような答えを書いてくるのです。

核が抜けている・間違っている場合

例えば、カツカレーを頼んだのに、肝心のカツが乗っていなかったら?
商品を見た瞬間、「カツが無いよ!」と言うか、「金返せ!」と言うかのどちらかですよね。
もしくは、一見カレーだったが、食べてみるとハヤシライスだったら?
残念な気持ちは想像に難くありません。
大幅な減点が予想されますし、そもそも採点すらされない場合もあります。

「以前は、足に大けがをしてしまったので、もうこれ以上陸上選手として部活を続けることができないと医者に言われたため、残念な気持ちだったが、演劇という、足を怪我した自分でも活躍できる場所を発見することができたから。」
→採点基準が、「核が無くても、ポイントが入っていたら点数をあげるよ」という優しいものであれば、4点はもらえるかもしれません。
しかし、文末を「気持ち」ではなく「から」と間違えたことにより、問われたことの中心である「気持ち」が全く書けていないため、0点と判断される恐れもあります。
この場合は、国語が苦手得意にかかわらず、入念な指導が必要となります。
そもそも問題をしっかり読まず、何を答えるかを考えないままにとりあえず書いてしまっている場合が多いですから、「答えのしまい方」を決め、逆算して肉付けをしていくように話をしていきます。

おわりに

いかがでしょうか?
「記述問題はカレーライスだ!」という題意はご理解いただけたでしょうか。
実際の指導の場面で、「ビーフカレーなのに牛肉が入っていない!」とか、「具なしカレー!」とか言うと、結構すぐに自分の記述のダメな部分をつかんでくれるので、おすすめだったりします。
大切なことは…
・問われたことに合った材料集めをすること!
・集めた材料を、正しい順で組み立てること!

以上2点なのですね。
記述が白紙になってしまう子には、模範解答を先に見せて、模範の内容が本文のどこにあるかを見つけさせるといいですよ。
材料さえ見つかれば、あとはそれを組み合わせるだけですからね。

記述問題は、10点中10点を取らなくても別に構わないのです。
10点中8点が取れれば最高!10点中6点でも御の字!くらいに思って、とにかく「形にすること」をまずは目標にしてくださいね。
記述マスターに向けて、がんばりましょう!

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お助け中学入試国語 ゆり

抜き出し問題part4「問題のレベルを見抜こう!」ー塾で教える解法、全部見せますー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

抜き出し問題のレベルを見抜こう!

今回で、抜き出し問題の解法については最終回となります。
これまで、「抜き出し問題には関わるな!」「抜き出しの基本」「抜き出し問題の裏技」と題して、抜き出し問題に対してどのようにアプローチするべきかをお話してきました。

今回は、抜き出し問題の難易度についてのお話をしたいと思います。

これまでにもお話ししてきたように、我々が国語のテストを作るときは、様々な形式の問題を、様々な難易度で用意するように心がけます。
なぜなら、入試までにできるだけ多くの問題のパターンに親しんでもらうことで、対応力を高めておきたいからです。

よくあるパターンなのですが、抜き出し問題は字数が限定されることが多い(~字で抜き出せ)ため、力業で「それっぽい内容で、字数に合うものを」探すことが多いです。
たしかに、そのやり方で偶然答えにたどり着くこともあるのですが、制限時間を有効に使っているとは言えません。

読解問題を解くときは、
①答えの内容を推測する
②答えの場所を推測する
③本文から使えそうな場所をチェックする
④形式(記述・抜出・選択)に合わせて答える

という流れで考える必要があるので、ただ闇雲に答えを探す方法は、最後の手段としてとっておき、まずは論理的に上記の①~④のステップを踏むようにしましょう。

テストを作る我々は、受験生がこの①〜④のステップを正しく踏めるような作問をします。
その際、難しい問題にするときは、①〜④のどこかに落とし穴を用意するわけですね。
落とし穴を増やせば、当然正答率は下がります。
抜き出し問題で正解する力をつけるには、その問題のどこに落とし穴があり、どのくらいのレベルなのかを知った上で、間違えた問題の直しをしていく必要があるのです。

抜き出し問題のレベルはどう決まる?

f:id:masa2001to2002:20170823033111j:plain
この表は、抜き出し問題のレベルを確定するときに私が使用しているものです。
Aが最も易しく、Dが最も難しい問題ということです。
次に、項目ごとの説明をします。
「近」…答えの材料になる場所が、傍線部から比較的近くにある場合。近ければ近いほど難易度は下がる。
「遠」…答えの材料になる場所が、傍線部から比較的遠くにある場合。遠ければ遠いほど難易度は上がる。
「場所の推測〇」…本文の構成から、「答えはだいたいこの辺りにあるだろう」という推測が可能な場合。
「場所の推測×」…本文の構成から答えの場所を判断しても、その場所に答えが無かったり、もしくはそもそも推測ができない場合。
「内容の推測〇」…答えるべき内容がどのようなものかが推測可能な場合。
「内容の推測×」…答えるべき内容の推測が難しい場合。

以上のような点から抜き出し問題を分析し、問題をADの四つのレベルに分類するのです。
Aは90%の受験生が正解するもの。
Bは70%の受験生が正解するもの。
Cは40%の受験生が正解するもの。
Dは正答率が20%を切るもの。
このように問題にレベルをつけると、テスト全体の正答率の予測を立てることができます。
例えば、ADまで、それぞれ5点の問題を5問ずつ用意すると…
A→5点×5問×90%=22.5点
B→5点×5問×70%=17.5点
C→5点×5問×40%=10点
D→5点×5問×20%=5点
となり、予測正答率は55点となるわけです。

入試問題に当てはめてみよう

この方法は、入試問題を分析する際にも役立ちます。
「自分の受験する学校は、抜き出し問題が多いが、内容と場所の推測はしやすいので、先に手を付けよう」とか、「この学校の抜き出しは、場所の限定をしにくいことが多いため、後回しにしよう」といったような、傾向と対策の分析に繋がるからです。
それでは、具体的に入試問題を使用して、抜き出し問題のレベルを見ていきましょう。

レベル

2017年関西創価中より
問五 -線部③「いのちよりものが大事だと思う人」はどのようになると筆者はいっていますか。本文中から十六字で書きぬきなさい。
①内容の推測…本文全体の要旨から、「いのちよりものが大事だと思う」ことを作者はマイナスだととらえている。答えの内容も、「マイナスの状態になる」ということを具体化したものだとは容易に想像できる。よって、内容の推測は〇となる。
②場所の推測…本文の流れから、答えは傍線部の後にあると考えられる。なぜなら、「いのちよりものが大事だと思う人」がどうなるかというその後の内容を探すわけだから、傍線部の前にあるのは文章の論理にそぐわないからである。
解答である「いのちを大切にすることができない」は、傍線部の二段落後と、比較的近くにある。よってレベルはとなる。

レベル

2016年樟蔭中より
問十五(2)「耳バカ」にならないために、筆者はどのようなことが必要であると述べているか。文中から十五字で抜き出せ。
①内容の推測…問題から、答えるべきは作者の意見であると推測ができる。「~が大切だ、~しなければ」といった内容であると想像できるため、内容の推測は〇となる。
②場所の推測…「耳バカ」状態を憂い、解決法を提示するという文章全体の構成から、解答は文章の後半、結論部分にあるのではないかと推測できる。
ただし、傍線部が文章の冒頭にあり、解答である「早い段階から聴く耳を育てること」は文章の最後にあるため、探しにくさがあるので、レベルとする。

レベル

2017年立命館中より
問7 筆者は、「支配」されないためにはどうすることが大切だと述べていますか、本文中から六十字以内でぬき出し、最初と最後の五字をそれぞれ答えなさい。
①内容の推測…「支配」とは誰かの影響を強く受けることをマイナスに受け取っている言葉である。「支配されないためにすべきこと」は、その反対の内容だとわかる。つまり、探すべき内容は「他の影響を受けず、自立する」的なものだとわかる。よって、内容の推測は〇となる。
②場所の推測…結論部分にあるかと思って探すのだが、最終段落とその近辺には答えが無い。よって、場所の推測は難しくなる。
また、傍線部によって指示された問題ではなく、文章全体を通して答えを考える必要があることから、答の場所は「遠い」と同カテゴリに属すると考える。
以上から、レベルとなる。

レベル

2013年四天王寺中より
問3―線②「ほんの少し気分が楽になった」のはなぜですか。解答らんにあてはまるように十五字内で抜き出しなさい。
①内容の推測…プラス方面の内容であることは推測できるが、直前の「ケイコちゃんを指で軽くつつくと」というヒントだけでは、何によってプラスの心情を持ったのかの推測はしにくい。
②場所の推測…文章の後半にはなさそうだという、ざっくりした限定しかできないため、場所の推測も難しい。
また、答えである「友だちの顔がくっきりと浮かんだ(から)」という部分は、傍線部からかなり離れたところにあるため、たどり着きにくくもある。
よってレベルはとなる。

おわりに

いかがでしょうか?
抜き出し問題は、選択肢問題や記述問題以上にきちんとした論理を組み立ててから答えを探し出さないと、ただ単に時間を空費するだけになってしまい、テスト全体によくない影響を与えることにもなりかねません。
それだけに、しっかりと「①内容の推測」と「②場所の推測」をしたうえで答えを探し出すというセオリーを身に付けておく必要があるのです。
逆に言えば、そのような方法さえ身に付ければ、ほかの受験生との差を広げる、大きなチャンスになるともいえるのです。
抜き出し問題マスターに向けて、がんばりましょう!

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抜き出し問題part3「抜き出し問題の裏技」ー塾で教える解法、全部見せますー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

抜き出し問題の裏技とは…

これまでは、抜き出し問題は、きちんとした手順で考え続ければ正解できる問題と、きちんとした手順で考えても、無理矢理問題が作られたために、答えにたどり着きにくい問題とに分かれるというお話をしました。
また、抜き出し問題において「きちんとした手順」とはどのようなものかについてお話してきました。

今回は、抜き出し問題の正解率を少しだけ・でも確実に上げてくれる裏技をご紹介したいと思います!

内容を対応させよ!

以前、読解問題には大きく分けてふた通りがあるということをお話しいたしました。
一つは、理由説明の問題。「なぜですか?」と問われるパターンです。
もう一つは、言い換え説明の問題。「どういうことですか?」と問われるパターンです。

この言い換え説明の抜き出し問題には「言い換え前と後の内容が対応しなければならない」というルールがあるということを知っておきましょう。

2016年 京都産業大附中より

問十一 「複眼でものを見る力」とは、どのような力ですか。本文中から二十五字以内でぬき出し、はじめと終わりの五字ずつを答えなさい。
→問題で与えられた言い換え前の表現を、いくつかに細分化しましょう。
すると、「複眼で/ものを見る/力」と分けられます。
抜き出すべき答えの中には、これらの内容と対応するものが絶対に入っているはずです。
「複眼」的な内容・「ものを見る」的な内容・「力」的な内容の入った二十五字以内という条件に当てはまる部分…ということで探していくと、次のような場所が見つかりました。
「他の人の考え方や価値観で、物事をとらえなおす能力」とあり、これが正解です。
「複眼」→「他の人の考え方や価値観で」
「ものを見る」→「物事をとらえなおす」
「力」→「能力」

以上のように、言い換え前と後を対応させることができます。
このテクニックをもとに考えると、見つけた部分がたとえ字数に合っていても、対応する部品が入っていなければ、他にもっとふさわしい部分があるということになるのです。

文字数の感覚を身に付けよ!

皆さんは、お子様が受験されるテストや入試問題の1行が、何文字で作られているかをご存知ですか?
たとえば…
・灘中→約65字
・甲陽中→約35字
・洛南中→約40字
東大寺中→約60字
四天王寺中→約45字
のように、1行がだいたい何文字くらいで構成されているかを知っておけば、「20字以内で抜き出せ」と言われた時、どのくらいの分量の部分を探せば良いかが感覚的にわかりやすいのです
ですから、第一志望の学校は、通常「赤本」と呼ばれる、英俊社より出版されている過去問集のほかに、教英出版から出版されている、実物と同じプリントの過去問集を使用して、行数・字数の感覚をつかんでおくとよいでしょう。


ここで、注意しておくべきことがあります。
次の図をご覧下さい。
f:id:masa2001to2002:20170823025925j:plain

Aのような場合であれば問題はないのですが、Bのように複数の行に答えの部分がまたがっていたり、Cのようにページをまたいでいたりする場合は、一目で答えを見つけにくいため、抜き出しが困難になります。
このように、答えが行をまたいでいる可能性も頭に置いておきましょう

さらに、抜き出し問題の字数条件には、次の三種類があることを知っておきましょう。
①「〜字ちょうどで抜き出せ」
②「〜字以内で抜き出せ」
③「〜字程度で抜き出せ」

①のように、文字数がぴったり指定された場合は問題ないのですが、②や③のように幅がある場合は、その許容範囲を知っておかなければなりません。

②の場合は、指示された字数マイナス4字までが許容範囲となります
例えば、「30字以内で抜き出せ」という条件であれば、26字までが許容範囲ということです。25字の部分を抜き出させる場合は、「25字以内」という条件にするのが普通なのです。

③の場合は、±3字までが許容範囲です。ごくまれに、±4字の問題がありますが、例外的です。
例えば、「10字程度で抜き出せ」という問題であれば、7字〜13字が許容範囲ということになります。

入試問題を例にとって

・2017年同志社香里中より
問五 -線⑥「これ」はどのようなことを指していますか。これより前の文中から二十字以内で抜き出しなさい。
答 日本の農山村から人がいなくなったこと(18字)

2016年近大附属和歌山中より
問九 本文全体を通して、筆者は「絵本」をどういうものであると考えていますか。解答欄に合うように、本文から十五字以内で抜き出して答えなさい。
答 (絵本とは、)美しい形と、美しいひびき(をそなえたものである)(12字)

2016年育英西中より
(4)-線③「やっぱり、人間が原因をつくっていたのである」とあるが、その原因の説明となる部分を本文中から五十字程度でぬき出し、解答欄に合うようにその最初と最後の五字を答えなさい。
答 戦後のエネルギー革命で、薪や炭に利用価値がなくなると、里山林は一斉に放棄され、巨木化が始まってしまった(から)(51字)

このように、どの解答も許容範囲内の字数に収まっていることがわかります。

文末に注目せよ!

先ほども述べたように、読解問題の種類は、「理由説明」と「言い換え説明」の二種類に大別されます。
抜き出し問題も例外ではありません。
どちらの種類であっても、「『〜だから』に続くように答えなさい」といったパターンの出題でない限りは、答えの文末には規則性があります。
前もって、その規則性を知っておけば、答えが見つかる可能性が飛躍的に高まります。
①理由説明の場合
「なぜですか?」と聞かれているため、抜き出すべき場所は「〜から」「〜ため」「〜ので」や、あまりないですが「〜理由」となります。
このような場合は、「〜から」みたいな所はないか!となめるように探していくことで答えにたどり着ける場合があります。

②言い換え説明の場合
→「どういうことですか?」と問われているため、抜き出すべき場所は「〜こと」になると考えられます。
他にも、「どういう人ですか?」という問題であれば「〜人」で、「どういう性格ですか?」という問題であれば「〜性格」や、性格の言葉を名詞化した「〜というやさしさ」のような言葉で終わるはずなのです。

入試問題を例にとって

2016年常翔啓光学園中より
問1 -線部①「かたづけをしたくなる特効薬」とあるが、これと同じ意味を表す部分を、解答らんに合うように文中から十七字で抜き出しなさい。
答 少しでもよく見られたいという気持ち
→「特効薬」という名詞で終わっている部分を言い換えるため、答えも名詞となる。

2016年ノートルダム女学院中より
問四「『わたし』が万引きをして、『おばあさん』に呼び止められるまで、どのような気持ちでいたのか。文中から十五字以上二十字以内のことばをぬき出して答えなさい。
答 世界から外れてしまったようなおそろしさ
→「どのような気持ち」かを抜き出す問題なので、答えの文末も「~気持ち」もしくは気持ちを表す言葉を名詞化したものになる。今回は「おそろしさ」である。

おわりに

いかがでしょうか?
今回述べた内容は、国語が得意な子であれば、経験的に身につけているものばかりです。
ですが、本当は、国語が苦手な子にこそ知ってほしいことなのです。
苦手な子には、どんなとっかかりでもいいですから、問題を解けた喜びを味わって欲しいと思います。
・言い換え前後の対応!
・字数のきまり!
・文末を合わせる!

このようなテクニックをもとに、ぜひ一問でも多く正解を積み重ねて下さい!

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皆様とお子様が、笑顔で中学入試を迎えられますように。

お助け中学入試国語 ゆり