ゆりのお助け中学入試国語!

「勉強のしようがない」と言われがちな国語。そんな国語のお悩みを、全て解決!

入試問題分析ー2017年西大和学園①ー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

2017年西大和学園中の論説

今回は、2017年の西大和学園中の大問一を取り上げます。
西大和学園中は、関西の私立中学校の中でも、一番ともいえるほど様々な改革を行っている学校だといえます。
少しでも優秀な人材に自身の学校を受験してもらうために、そして、入学してくれた人材に良質な体験を積ませるために。
変化を恐れないその姿勢には、尊敬すらおぼえます。
今回も、各小問ごとにレベルを解説していきましょう。

2017年西大和学園中論説文の解説

和田秀樹さんの『日本人はなぜ嘘つきになったのか』より出題されました。
灘中高卒業後、東京大学理Ⅲへ入学・卒業。
精神科医として活躍しながらも、受験アドバイザーとして様々な著書がある筆者が、「嘘つき」になる心理を解き明かそうとします。
↓ぜひ、全文をお読みください。

まずは、文章全体の構成をつかみましょう。

「大阪のおばちゃんは騙されにくい」から始め、「関西にはストレートな物言いがカッコ悪い」と展開する。

単眼思考…物事の一面だけに目を向けて一つの正解を求める傾向
複眼思考…多種多様な側面から物事を捉える思考パターン

複眼思考を身に付けることで、情報の送り手の意図・動機を見極めることに力を注がなければならない

我々は自分で自分をだまし、自分に嘘をつくことがある。

疑う力を高め、ほかの可能性も考えられるような姿勢を身に付ける

西大和学園中の論説は、選択肢問題は比較的解きやすいのですが、記述問題はかなりの難度です。
選択肢問題を確実に正解することで、正しい文章理解を進めることで、本文全体の構成を理解しながら、記述問題を解くために必要な材料を見つけていく。
西大和学園は、毎年お手本のような入試問題を作成してくださるのです。
小問ごとに解説をしていきましょう。

問一の解説

=部あ~おのカタカナを、それぞれ漢字に直しなさい。(かい書で、ていねいに書くこと)

説が出てくるハイケイ
中学受験生であれば、一度ならずとも練習したことがあるでしょう。
同音異義語についても、それほど迷わないかと思います。
レベルはAです。

大人へと成長するカテイ
「カテイ」には、「課程・家庭・仮定・下底・過程」と、同音異義語が多めです。
特に「課程」と「過程」は使い分けを苦手とする子が多いです。
レベルはBです。

セケン話
小学生の生活と近く、迷わないでしょう。レベルAです。

キビしくなり
こちらも、絶対に正解したいです。
「のぶん」を使わず、「又」を書いてしまうことがあるので気を付けましょう。
レベルはAです。

徹底的に叩きのめすようないまのフウチョウ
中学受験生であれば、一度ならずとも練習したことがあるでしょう。
同音異義語についても、それほど迷わないかと思います。
レベルはAです。

問二の解説

( A )~( E )にあてはまる言葉として最もふさわしいものを、次の中からそれぞれ一つずつ選び、記号で答えなさい。

接続関係を見抜く問題です。
( A )の直後に「東京の家電量販店は」と、具体例が始まっています。
ここから、「たとえば」が入るとわかります。

( B )の直前に「言葉をそのままとるほうがアホだと思われる」とあり、直後に「相手の言葉をストレートに受け止めることは少ない」とあります。理由→結果となり、「だから」が入ります。
( C )の直前までは「相手の意図を見極める」という内容がありますが、直後には「ウソを見破ることは難しい」とあります。逆接関係ですから、「しかし」が入ります。

( D )の直前には「疑う力を高め、ほかの可能性も考えられるような姿勢を身につける」とあり、直後に「ウソに騙されなくなるだけでなく、思考や発想も豊かになる」とあります。
こちらも空欄Bと同じく、理由と結果のつながりですが、「だから」が当然の帰結を示すのと違い、「そうすれば」は読者にとって未知の要素が強くなります。

( E )の後には、それまでの内容がまとめられています。「要するに」が入ります。

いずれも、空欄の前後関係を正しく読み解けば正解できます。
材料は空欄の前後にとどまり、当然変化はありません。レベルはAです。
ただし、「同じ記号を二度以上用いてはいけません」という条件があることに注意しましょう。
これは、一か所を間違えてしまえば、ところてん式にどんどん間違いが連鎖していくことを意味します。
注意深く前後関係を読み解きましょう。

問三の解説

―部1「これに対して大阪は、表示価格から値下げをさせるというビジネスモデルが一般的だ。」とありますが、これは大阪の販売店のどのような考え方の表れですか。最もふさわしいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

傍線部を言い換える問題です。言い換え問題の材料は、傍線部の直前や直後、もしくは同じ段落にあることが多いです。
なぜなら、傍線部の内容がわかりにくかったり、作問者がわかってほしかったりするから問題になるわけです。
それは、筆者も同じ。ということは、傍線部の言い換えた内容は、すぐに説明したくなるのが人情です。材料は傍線部の近くにある可能性が高いのです。
今回も、傍線部の直後が材料となります。
「大阪の人は、相手の言葉をそのまま受け取るということをしない」「関西には、ストレートな物言いがカッコ悪い…というような文化がある」とあります。
これと合うのは、エの「大阪では直接的な表現をするのは気がきいたやり方ではないと感じる人が多く、購入者も表示価格をそのまま受け止めずに値下げの交渉をしてくるはずだという考え方。」となります。
材料が傍線部と近く、さらに変化の度合いも少ないので、レベルはAです。

問四の解説

―部2「プライド」の意味として最もふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

傍線部の直前直後から材料を見つけにくい問題です。
とはいえ、「プライド」の意味は、中学受験生であれば知っておきたいところです。
答はウ「自尊心」となります。レベルはA。正解したい問題です。

問五の解説

―部3「自分で自分を騙す、自分にウソをつく」とありますが、それはなぜですか。その理由として最もふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

傍線部の直前に「このように」という指示語があります。
ここから、使うべき材料は指示語の直前にあると考えられます。
傍線部の中や、傍線部を延長した部分に指示語がある場合は、その先に材料があることが多いですから、必ず追いかけましょう。
今回は、指示語の前に「人間は何事に対しても疑うより信じたいという気持ちのほうが強く働く」という内容があります。
これと合う選択肢は、ウ「他人を疑ったり、その結果自分が騙されていることが分かったりするのが嫌だから」となります。
材料は傍線部と近いですが、選択肢の変化が大きめなので、レベルはBです。

問六の解説

―部4「冤罪や被害妄想などはその典型である。」とありますが、それはどういうことですか。その説明として最もふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

ー線部の内容を言い換える問題です。
ー線部の中に「その」という指示語がありますので、直前の内容が答えの材料であるとわかります。
「しかし、どんな話も思い込みで決めつけてしまうと、疑う力は養われない。自分はウソを見破る能力が高い、絶対に騙されない、と自負している人ほど二分割思考に陥りやすく、誤った判断を下しやすくなる。」とあり、これが材料です。
選択肢は、以上の内容をかなりまとめた形にしているので、レベルはBです。
答えはイの「冤罪や被害妄想などは、社会がウソを許そうとせず、どんな話も思い込みで決めつけてしまうことによって引き起こされることの代表的な例であるということ。」となります。

問七の解説

【  】にはどのような言葉が入りますか。最もふさわしいものを次の中から一つ選び、記号で答えなさい。

空欄の前に、次のような図が挿入されています。

よくある目の錯覚の問題のように見えますが、実は今回はBの方をほんの少しだけ長くしてあるのです。
筆者は、「思い込んでしまうことで、正しい判断をせず、騙される」体験を読者にさせようと思ったのです。

「【 】という思い込みがあると、判断を誤りやすくなる。」とあるので、答えは「誤って思い込んでしまう」内容になると考えられます。
答えは、エの「錯視の問題だから答えは『同じ』に決まっている」となります。
空欄の前の3行と図を正しく読めば答えはわかります。
レベルはAです。

問八の解説

筆者は「ウソに騙されない」ためにはどうすればよいと考えていますか。本文全体をふまえて六十字以内でわかりやすく説明しなさい。

条件に「本文全体をふまえて」とあることから、材料は本文全体に散らばっているのだというメッセージを受け取ることができます。
また、六十字以内という条件から、材料は3つ〜4つはありそうです。
さらに、「騙されないためにどうするべきか」という問題ですから、本文には「〜すべき」「〜ので騙されない」「〜が大切だ」「〜が必要だ」などと書いてある部分に材料がありそうだとわかります。

以上の内容をもとに、材料を探しましょう。

①関西人は文化的に「複眼思考」が自然に養われる…騙されにくい気質と関係している
②複眼思考とは、多種多様な側面から物事を捉える思考パターン
③(ウソを見破る)そのためにも疑う力を身につけることが大切だ
④疑う力を高めるためには、自分の信じていることさえ疑って、ほかの可能性も考えられるような姿勢を身につけることが必要だ

以上の材料をまとめ、六十字以内に収めましょう。
答えは「相手の言葉を疑う能力や複眼思考を養い、自分が正しいと信じていることさえ疑って、ほかの可能性も考える姿勢を身につける。」となります。
材料が四ポイントと多めで、本文全体に散らばっているので、難度は上がります。
しかし、それぞれのポイントの変化は少ないので、レベルはCです。

おわりに

いかがでしょうか?
西大和学園は、漢字や語句問題、選択肢問題は比較的易しいものが多いです。
傍線部の前後をきちんとつかめば正解できるので、確実に合わせていきましょう。
記述問題は、他の問題と比べると、かなり書きにくいものになっています。
問題分析を行い、文章全体の理解をもとに材料を集め、得点力のある解答を作る練習を重ねて下さいね。
赤本や過去問題集をもとに、しっかりと対策をして行きましょう!


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お助け中学入試国語 ゆり

入試問題分析ー2017年灘中③ー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

2017年灘中2日目の詩

今回は、2017年の灘中1日目の大問二を取り上げます。
灘中の特徴を上げるとすれば、「言語事項と記述」ということになるでしょう。
何十年間も同じ傾向で入試を続ける全国最難関の灘中。
そこには、語彙力の豊富さこそが国語の基礎であり、それを表現することが国語の中心であるという強い意志が感じられます。
今回も、各小問ごとにレベルを解説していきましょう。

2017年灘中1日目の大問三の解説

山崎るり子さんの「詩」からの出題でした。
以前の「詩の歩き方」と題した記事で、この詩の解説を行いました。
↓ぜひそちらもご覧ください。
www.otasukekokugo.com
こちらの記事では、詩そのものの読解を行っています。
詩は、与えられる情報が物語や論説・随筆よりも圧倒的に少ないため、詩全体の理解ができなければ、設問に対応することができません。
今回は、小問ごとに解説をしていきましょう。

問一の解説

―線部1「また会おうと木は倒れた」とありますが、これは何を表していますか。最も適当なものをア~オから選び、記号で答えなさい。

傍線部の前にある第一連には、高くなりすぎた木がおじいさんに切られ、くりかえし朝がきた後に切り株から新たな芽が出てきた描写があります。
そして第二連では、また大きくなってきた木がおじいさんに切られるのです。
ここから、傍線部の「また会おう」という木のセリフは、「何度も生えてくる」という意味であるとわかります。
答は、イの「切り株から芽吹き、時間をかけてまた立派な木に生長すること」となります。
詩全体の理解が不十分であれば、アの「おじいさんの死後にあの世で再会する」やエの「おじいさんを敵としてうらんでいる」、オの「木のたましいはその場に残っている」などにひっかかるでしょう。
とはいえ、すぐ前の連を材料にして考えると正解できます。
また、選択肢の変化は大きいですが、詩全体の理解をもとに消去法が有効に使えるので、レベルはBです。

問二の解説

―線部2「おじいさんは何も言わなかった」とありますが、このとき「おじいさん」が「何も言わなかった」のはなぜですか。理由を答えなさい。

おじいさんは、「また会おうと木は倒れた」という木のセリフに対して「何も言わなかった」のです。
ここから、おじいさんが返事をできなかったのは、「また会うことができないから」だということがわかります。
なぜ会うことができなくなるのか。それは「じきに死ぬから」なのです。
答は「自分はじきに死んでしまうため、次に木が大きく生長した姿を見られないと思っているから。」となります。
詩の内容をもとに考える問題ですが、省略された内容にまで踏み込んで記述しなければならないため、難度は高いです。
レベルはCです。

問三の解説

―線部3「どんどん暗くなる部屋」とありますが、「部屋」が「どんどん暗くなる」のはなぜですか。理由を答えなさい。

直前の連に「木は伸びていった/枝を広げ葉を広げ/高く高くどこまでも/伸びていった」とあります。
ここから、木が切られることなく、どんどんと生長していった様子が読み取れます。
傍線部にある「どんどん暗くなる部屋」の原因は、伸びていった木の枝や葉により、太陽の光がさえぎられているからなのですね。
答は「木が生長し、部屋に入る光をさえぎっているから。」となります。
詩全体の主題をつかんで「しまった」ことにより、「暗くなる」という内容をおじいさんの死とつなげて考えてしまう可能性があります。
この問題も、問二と同じく省略された内容にまで踏み込んで記述しなければならないため、難度は高いです。レベルはCです。

問四の解説

―線部4「木といっしょにどこまでも/伸びていけた」とありますが、これはおじいさんのどのような想いを表していますか。最も適当なものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。

傍線部の「いっしょに」「伸びていけた」という表現から、おじいさんはプラスの想いを持っていることがわかります。
ここから、選択肢イ「おびえている」やエ「同情している」、オ「悔やんでいる」は選べません。
また、アの「早く自分も元気になって」は、主題から大きく外れています。
正解はウ「体は動かなくなったが、生長する木に一体感をおぼえ、うれしく思っている。」となります。
材料は傍線部から近いですが、変化は大きいです。しかし、消去法が有効ですから、レベルBです。

問五の解説

―線部5「枝で窓をつきやぶり/根で家をかたむかせた」からは、木の生長の様子以外に、おじいさんについてどのようなことがわかりますか。簡潔に答えなさい。

おじいさんが住んでいた家がかたむくということは、その家に住むことができなくなったということです。
ここまでの設問理解からも、「家がかたむく」ことが暗示していることは明確です。
答は「死んでしまったということ」です。
詩から間接的に読み取る必要がありますが、比較的理解しやすいので、レベルはBです。

問六の解説

作者はこの詩で何を表現しようとしていますか。最も適当なものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。

「くり返しくり返し朝がきて」「おじいさんの分の場所には/木が大きく緑を広げ」「北の町から若者が/ノコギリをかついでやってくる」とあります。
おじいさんの死後、あらたに若者がやってきたことから、「それぞれの生命がその役目を終え、次の生命にバトンを渡していく」という主題をつかみましょう。
答は、オの「つながり合う生命と時の流れ」となります。
主題の理解が不十分だと、イの「木とおじいさんとの厚い友情」や「人の一生の短さとはかなさ」などにひっかかるでしょう。
レベルはBです。

おわりに

いかがでしょうか?
灘の詩は、主題をしっかりとつかんだ上でないと、記述問題に対応することはできません。
詩の中にある情報をつなぎ合わせ、表面には書いていない本質にせまる。
そのような読解姿勢が求められるのです。

「生命のつながり」
「寂しい少年への共感」
「幼子の純粋さ」
「人生の晩年のさみしさ」
以上のように、灘中の詩で問われる主題は様々です。
いずれも、人生経験の少ない小学生には難しいものばかりです。
社会のリーダーとして成長するために必要な、やさしさを持っているか。
広い視点を持っているか。
もし持っていなかったとしても、入試という場所でその詩を師として主題を理解し、成長することができるか。
灘中入試伝統の大問三の詩からは、そのようなメッセージを感じることができるのです。

過去問を使い、詩の主題をつかむことに慣れていきましょう!

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お助け中学入試国語 ゆり

入試問題分析ー2017年灘中二日目②ー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

2017年灘中2日目の随筆②

今回は、2017年の灘中1日目の大問二を取り上げます。
灘中の特徴を上げるとすれば、「言語事項と記述」ということになるでしょう。
何十年間も同じ傾向で入試を続ける全国最難関の灘中。
そこには、語彙力の豊富さこそが国語の基礎であり、それを表現することが国語の中心であるという強い意志が感じられます。
今回も、各小問ごとにレベルを解説していきましょう。

2017年灘中1日目の大問二の解説


ドナルド・キーンさんの『ドナルド・キーン自伝』からの出題でした。
アメリカに生まれた作者が、戦争という悲劇に見舞われながらも、日本に留学し、司馬遼太郎三島由紀夫川端康成大江健三郎といった、綺羅星のごとく居並ぶ文豪たちとの交流が描かれます。
↓ぜひ、全文をお読みください。

まずは、構成をつかんでおきましょう。

海軍語学校を卒業した筆者は、派遣先の真珠湾で日本軍の文書を翻訳する仕事をしていた。

亡くなった日本人兵士の日記を翻訳することになった。

そこには、死を覚悟した兵士の本心が書かれていた。

筆者は、日記を上官に渡さず、兵士の希望通り、家族に渡そうと考え、机に隠した。

しかし机は調べられ、日記は没収された。

日記を通じて出会った彼らが、筆者が心を通わせた最初の日本人だったのだ。

灘中の記述問題は、本文にそのまま使える材料がある問題は少なく、傍線部にこめられた筆者の意図を自分の言葉でまとめなおす問題が多いです。
文章の本質をつかんでいないと書けない問題が多いため、難度が高くなるのですね。
小問ごとに解説をしていきましょう。

問一の解説

―線部A~Fのカタカナを漢字に改めなさい。
灘中の漢字は、本文の中の言葉を使って問題が作られます。
小学生の既習漢字を使っていて、かつ小学生には縁遠い言葉がばんばん出てくる文章があれば難度を上げることができますが、そんな都合の良い文章はあまりありませんね。
ですから、灘中の漢字問題はそれほど難しくありません。

リクチの上
中学受験生でない小学生でも正解できるでしょう。
答は「陸地」ですから、同音異義語もありません。レベルはAです。

ブショに配属された
今回の中では一番誤答が多い問題でしょう。
「ブショ」は、公文書などでも誤用されることがあります。
「いくつかに分かれている場所」という意味を推測し、「部所」と書いてしまいがちです。
しかし、正解は「部署」です。
小学生の生活から遠く、同音異義語による間違いが予測されますが、「署」を推測することは可能ですから、レベルDまではいきません。レベルCです。

C戦争をシュウケツさせる
文脈から「終わらせる」という意味であることはわかります。
「シュウ」も「ケツ」も推測が可能です。
「集結」という同音異義語もありますが、間違える受験生は少ないでしょう。
レベルはAです。

D文書は~サイシュウされたものだった。
「採り集める」という意味だとつかみやすいため、レベルはAでしょう。

E情報をテイキョウしてしまう
中学受験生であれば一度ならずとも書いたことがあるでしょう。
レベルはAです。

F日記をシキュウされ
中学受験生であれば一度ならずとも書いたことがあるでしょう。
レベルはAです。

問二の解説

―線部1「その機密を外部の者に漏らした者が絞首刑になるのを最後まで責任を持って見届けるつもりだ」とありますが、大尉はこの言葉でどのようなことを言おうとしていますか、答えなさい。

傍線部以外の部分を使って言い換える問題ではありません。
傍線部の表現の意味するところをつかみ、自分の言葉で言い換えましょう。
大尉は、軍事機密を漏らした者がどういう末路をたどるかを筆者に伝えたのです。
絞首刑=死 となるわけですから、「絶対に漏らしてはいけない」と伝えたかったのですね。
解答は「軍事機密を絶対に外部の者に漏らしてはいけないということ。」となります。
自分の言葉で言い換える問題ですが、比較的考えやすいため、レベルBです。

問三の解説

―線部2「愉快この上ない」とありますが、この表現にこめられている筆者の気持ちとして、最も適当なものを次のア~オから選び、記号で答えなさい。
「愉快この上ない」とは、言うまでもなくプラスの表現です。
しかし、傍線部の直前に「こうした」という指示語があるので追いかけると、問三で考えた「情報を漏らすと絞首刑になる」という部分が見つかります。
これは当然マイナスに受け取ると考えます。
つまり、筆者は「心中はマイナス、表現はプラス」という複雑な状況であるわけです。
これを、「皮肉」といいます。
「皮肉」と合う選択肢は、オの「反感」です。
材料が傍線部の近くにありますが、その変化の度合いは大きいです。しかし、消去法が有効なので、レベルはBです。

問四の解説

―線部3「判で押したような」とはどういう意味ですか、答えなさい。

本文中から材料を見つける問題ではありません。
「判で押したよう」という比喩が意味するところを正確につかみ、言い換えましょう。
傍線部の前に、「日課の報告書」や「用紙やインク瓶の数量」などという内容があることから、「見ても面白くない」や「血の通っていない」などといった内容を書いてしまうかもしれません。
しかし、この問題は「比喩表現の言い換え」であることに注意しましょう。
比喩表現の言い換えは、言い換え前と言い換え後の共通点をつかまなければなりません。
「判で押した」とは、「ハンコを押す」ことです。
ハンコは、何回押しても同じ印影になります。
ここから、「判で押したよう」とは、「かわりばえのない内容」であることがわかります。
自分の言葉で言い換える問題で、少し想像しにくいですから、レベルCです。

問五の解説

―線部4「『間違い』を指摘し」とありますが、筆者が「間違い」に「 」をつけたのはなぜだと考えられますか。理由を答えなさい。

カギカッコの用法に注目させる問題です。
カギカッコには、次の四つの用法があります。
①セリフ・思い
②引用・題名
③強調
④通常とは違う意味を持たせている
今回は④のパターンです。
筆者は、退屈な文書の翻訳に飽きて、少しでも楽しくするために、日本語の文書を古風な英語にしたり、通俗小説の文体で訳したりしていたのです。
これは、形式こそ海軍英語ではないですが、内容としては間違ってはいないわけです。
筆者は、「間違ってはいない」という気持ちがありながらも、大尉に「間違い」と指摘されたことに反発し、カギカッコつきで表現したのですね。
答えは「形式を古風にしたり通俗小説の文体にしただけで、内容は間違ってはいないから。」となります。
材料が傍線部の近くにありますが、変化の度合いは大きいので、レベルBです。

問六の解説

―線部5とありますが、「日記の筆者」が「本当に感じたことを書」くことができたのはなぜですか。その理由を説明した、次の文の空欄X・空欄Yに入れるのに適当な言葉をそれぞれ十字以内で答えなさい。

【 X 】ことを予感するような状況では、【 Y 】ことなど気にならなかったから。

傍線部を含む段落に、「彼らは上官が日記を検閲することを知っていて、それは日記に記された感想が十分に愛国的かどうか確かめるためだった」とあります。
また、傍線部の直前に、「自分が一人になってマラリアにでも罹れば、なにも偽りを書くいわれはなかった」とあります。
これらを材料として、それぞれ十字以内にまとめましょう。

【 X 】は「自分が死んでしまう」が、【 Y 】は「日記が検閲される」が入ります。
【 X 】は、材料は傍線部と近いですが、かなり変化が必要なので、レベルBです。
【 Y 】は、変化は小さいですが、傍線部から少し遠いので、レベルBです。

問七の解説

―線部6とありますが、日記を没収されたことがどうして「痛恨の極み」だったのですか。理由を答えなさい。
「痛恨の極み」とは、強いマイナスの心情です。
その理由も当然マイナスになります。
傍線部の直前に「これは」とあるので、指示語を追いかけましょう。
すると、「日記は没収された」が直接の理由であるとわかります。
これを中心とし、説明を肉付けしましょう。
筆者は、日記を兵士の願い通りに家族に届けようと思っていたのですね。
その思いを遂げられなくなったため、筆者は「痛恨の極み」となったわけです。
以上をまとめると、答えは「日記が没収されてしまい、日本人兵士の本心を家族に伝えることができなくなってしまったから。」となります。
中心となるポイントは見つけやすいですが、過不足なく説明するのに若干手こずるかもしれません。
レベルBです。

問八の解説

―線部7とありますが、「本当に知り合った」とはどういうことですか、答えなさい。

傍線部とその直後には「私が本当に知り合った最初の日本人は、これらの日記の筆者たちだったのだ。」とあります。
他の日本人と、日記の持ち主であった日本人との違いを考えれば、「本当に知り合った」の意味をつかむことができます。
それは、問七でも読解した通り、「相手の本心に触れた」ということです。
どうやって本心に触れたかを説明して付け加えれば、解答の完成です。
亡くなった兵士の日記に書かれた本心に触れ、心を通わせていたということ。」となります。
何を書けば良いかが問題からつかみにくく、言い換える内容が考えにくいでしょう。レベルはCです。

おわりに

いかがでしょうか?
前回と同じく、傍線部の内容を自分に引き寄せ、自分の言葉でまとめさせる問題が多いことに気がついていただけたでしょうか?
本文中に材料がある場合も、その材料を大きく変化させないとうまく答えにならないように工夫してあることがわかります。
灘中の先生方は、きちんと自分の言葉で文書の内容を説明することができる理解力と語彙力を持った子に入学してほしいと考えていらっしゃるのでしょう。
灘中の受験生は、そんな先生方の思いに応えるべく、使える言葉をしっかりと増やし、説明する訓練を積まなければなりません。
過去問題集・赤本をもとに、しっかりと傾向をつかんでくださいね!

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お助け中学入試国語 ゆり

入試問題分析ー2017年灘中二日目①ー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

2017年灘中2日目の随筆①

今回は、2017年の灘中1日目の大問一を取り上げます。
灘中の特徴を上げるとすれば、「言語事項と記述」ということになるでしょう。
何十年間も同じ傾向で入試を続ける全国最難関の灘中。
そこには、語彙力の豊富さこそが国語の基礎であり、それを表現することが国語の中心であるという強い意志が感じられます。
今回も、各小問ごとにレベルを解説していきましょう。

2017年灘中2日目の大問一の解説


上橋菜穂子さんの『物語ること、生きること』からの出題でした。
上橋菜穂子さんは、「守り人シリーズ」や『鹿の王』の作者として有名です。
『物語ること、生きること』は、上橋さんが作家として大成するまでの道のりを描いた作品です。
どのような作品に、どのような言葉に影響を受けてきたか。
目頭が熱くなる言葉でいっぱいです。
↓ぜひ、全文をお読みください。

まずは、構成をつかんでおきましょう。

小学生のころ、叔父の言葉により、大学院まで進学して研究者になろうと考える

偉人伝を読み漁り、自分との共通点を見出してうれしくなっていた。

偉人には、学ぶことへの飢えがある。

人生は一度きりしかないが、その限られた時間の中で、自分にできる学びを繰り返すことで、次世代へとその意志を受け継ぐ。

灘中は、その問題のほとんどが記述問題であり、選択肢問題や抜き出し問題は少ないです。
また、「~字以内で書け」といった条件が設けられることも少ないため、解答用紙に用意された行数から、記述に必要な材料の数を推測する必要があります。
少なければ一行(15字程度)、多ければ三行(50字程度)ですから、それほど大きい記述問題ではありません。
しかし、一から自分の言葉でまとめたり、本文に材料があっても、それを大きく改変したりと、決して冗長になることなく、本質をまとめる必要があります。

問一の解説

―線部A~Dのカタカナを漢字に改めなさい。

灘中の漢字は、本文の中の言葉を使って問題が作られます。
小学生の既習漢字を使っていて、かつ小学生には縁遠い言葉がばんばん出てくる文章があれば難度を上げることができますが、そんな都合の良い文章はあまりありませんね。
ですから、灘中の漢字問題はそれほど難しくありません。

A叔父ならではのケンカイ
中学受験生であれば、一度ならずとも練習したことがあるでしょう。
文脈から、「見る」「理解」という意味も推測が可能です。
レベルはAです。

B偉人たちのギャクテンゲキ
「逆転」も「劇」も思いつきやすいです。
レベルAです。

C祖母の家のヤネウラ
限りなく100%に近い正答率でしょう。
レベルAです。

D日がれる
こちらも、限りなく100%に近い正答率でしょう。
レベルAです。

問二の解説

―線部1「三つ子の魂、恐るべし」とありますが、ここから筆者がどうなったことがわかりますか、答えなさい。
「三つ子の魂百まで」の意味を知っていると有利な問題です。
「小さい頃に身に付けた習慣・性質は、歳を取っても変わらない」という意味ですね。
これを、傍線部の直前の内容を使い、言い換えればよいのです。
「小さい頃に身に付けた」→小学生の頃に心に決めた通り
「歳を取っても変わらない」→大学院まで進学したということ
以上2点を書けば正解です。
傍線部の直前に材料があり、しかもそれほど改変せずとも書けるので、レベルAです。

問三の解説

―線部2とありますが、「偉人伝の人たち」は「ウルトラマン」とどのような点が違いますか、答えなさい。

傍線部の中に、「地続きのヒーロー」という表現があります。
ウルトラマン」は筆者とは全く違う世界にいますが、「偉人たち」は筆者と共通点があったということですね。
あとは、傍線部の後の6行を使い、筆者と偉人たちの共通点をまとめましょう。
答えは「偉人たちは完全無欠ではなく、人とは異なる欠点や過剰さを生かして道を切り開いた点。」となります。
材料は傍線部の近くですが、少し量が多いです。ただし、材料の改変はそれほどないので、レベルBです。

問四の解説

―線部3とありますが、筆者はどうして「すっかりうれしくなってしま」ったのですか。理由を答えなさい。

傍線部の直前に、「私も本の虫だったので」とあります。
理由を答える問題なので、この部分が中心の材料だとわかります。
しかし、これだけでは正解になりません。
「私」とあるので、私が誰と同じだったのかをつかみましょう。
それは、「キュリー夫人」です。
キュリー夫人も筆者と同じく「本の虫」だったことを知って、偉人と自分が同じ性質をもっていたことで身近に感じ、嬉しかったのですね。
答えは「偉人であるキュリー夫人が自分と同じく読書に没頭していたことを知り、身近に感じたから。」となります。
材料は多めですが、その場所は近く、そのまま使えるので、レベルBです。

問五の解説

―線部4「学ぶことへの飢え」とありますが、「飢え」というたとえを用いることによって、どのような様子が表現されていますか。わかりやすく説明しなさい。

傍線部の直前に「あの」という指示語があるので、材料はその直前の部分にあると推測できます。
キュリー夫人がどのような姿勢で学んでいたかをまとめればよいのですね。
「飢え」とは、食物を欲してやまない状況のことです。キュリー夫人は、食事もそこそこに、生活の全てを研究に費やしていたのです。
答えは「生活の全てをぎせいにしても学び足りないほど、ひたすら勉強する様子。」となります。
材料の場所は見つけやすいですが、変化させる必要があるので、レベルBです。

問六の解説

―線部5「それだけのこと」とありますが、どのようなことですか。わかりやすく説明しなさい。

指示語の内容を追う問題です。
材料は傍線部の直前の「実験を繰り返しながら、みんながページをめくっていて、最後にページをめくったときに『あった!』と言ったのが自分だった」という部分だとすぐにわかります。
あとは、この部分を、問題の指示通りに「わかりやすく」言い換えましょう。
材料の中には「ページをめくる」という比喩が用いられています。
これを言い換えると、「わかりやすく」説明したことになります。
「先人が実験を繰り返し進めた研究をもとに自分が研究を進めていた結果、ぐうぜん自分が大発見できただけだということ。」となります。
材料の場所は明確ですが、変化の度合いは大きいです。レベルBです。

問七の解説

―線部6「一回性の命」とはどのようなものですか。自分の言葉で説明しなさい。

傍線部を「自分の言葉で」説明する問題です。
つまりは、本文中に材料となる部分が無いということになりますね。
ただし、傍線部の内容はそれほど難解ではないため、レベルはCです。
問六で説明したように、筆者は「先人の研究成果があって、それを自分が受け継ぎ、また次の研究者にバトンを渡していく」と考えているのです。
なぜバトンを受け継ぐ必要があるかというと、人間は「一回性の命」しか持たないため、バトンを受け継ぐしかないということなのです。
ということで、答えには「一度きりしかない」といった内容を入れればよいとわかります。
解答欄が1行しかなく、15字程度でまとめる必要があります。
答は、「人生は一度きりだということ。」となります。

問八の解説

―線部6「自分のページをめくっていかざるをえない衝動」とありますが、「ページをめく」るとはどのようにすることですか。問題文中の―線部6以降の言葉を用いて答えなさい。

条件に、傍線部6以降の言葉を用いてとあるので、文章の最後の7行を使えばよいとわかります。
また、ここまでの問題から、「ページをめくる」とはどうすることなのかもつかむことができたでしょう。
材料は多いですが、範囲の指定もあり、内容の推測がしやすいため、レベルはBです。

まず、答えの中心を決めます。
「ページをめくる」→「誰も解くことができなかったことに挑み続ける」
これを中心にして、理由をつけたし、説明していきましょう。
「有限の命を生きる中で」
「それでも何かを知りたいと思い」
以上3点をまとめましょう。
答は「有限の命を生きる中で、それでも何かを知りたいと思い、だれも解くことができなかったことに挑み続けること。」となります。

おわりに

いかがでしょうか?
1日目の国語では、合格するためには8割程度の得点が必要でした。
2日目は、7割程度の得点が必要です。
今回の解説からお分かりいただけると思うのですが、全国最難関の灘中の国語といえど、レベルAやBのものもあるのです。
(文章難度・言い換えの度合いなどで、当然他の学校よりも難しさは上なのですが)
レベルAは絶対に正解し、レベルBも正解、もしくは部分点を多めにもらう解答を作る必要があるのです。
灘中に合格するためには、「きちんと傍線部で与えられた内容を理解すること」に加え、「本文中から材料を探し、それを自分の言葉で再構成すること」が必要なのです。
いずれお話ししたいと思うのですが、これは東京大学の現代文の入試傾向と全く同じなのですね。
灘中卒業生の多くが、その進路に東京大学を選んでいることと、無関係とは思えませんね。
中学受験生の皆さんも、今学習している内容は、6年先の大学入試と直結しているのだということを理解し、手を抜かずにがんばってほしいと思います。

過去問題集・赤本をもとに、しっかりと傾向をつかんでくださいね!

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お助け中学入試国語 ゆり

入試問題分析ー2017年灘中1日目ー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

2017年灘中1日目の随筆・言語事項

今回は、2017年の灘中1日目を取り上げます。
灘中の特徴を上げるとすれば、「言語事項と記述」ということになるでしょう。
何十年間も同じ傾向で入試を続ける全国最難関の灘中。
そこには、語彙力の豊富さこそが国語の基礎であり、それを表現することが国語の中心であるという強い意志が感じられます。
今回も、各小問ごとにレベルを解説していきましょう。

2017年灘中1日目の解説


養老孟司さんの「虫の季節」からの出題でした。
養老孟司さんの随筆は、大ベストセラーとなった『バカの壁』もそうなのですが、構成を取りにくいものが多いです。一文ごとに話題が変わっていくような流れで、どこに何が書いてあるかをつかみにくいのですね。
灘では、選択肢や抜き出しで理解を問うことはあまりないので、その点は心配ありません。

問一の解説

―線部1「五月蠅と書いて『珍しい』と読まなければならない」とありますが、「五月」と「蠅」を合わせた「五月蠅」を「珍しい」と読まなければならないのはなぜですか。理由を答えなさい。

傍線部の直前に「五月蠅と書いて、『ウルサイ』と読ませる。でも今は違いますね」とあります。
使えそうな材料はこの部分だけです。
五月に蠅が出てくるので、ぶんぶんとうるさかった昔。でも今はそうではないのですから、反対にすればよいのですね。
答は「今は昔と違って、五月に蠅がでてくることは少なくなっているから。」となります。
塾が出している解答や、過去問題集を見比べると、「環境の変化」や「旧暦と新暦の違い」について触れている解答もありますが、オーバースペックでしょう。
本文から直接読み取れる、ぎりぎりの所を狙って解答を作るようにしましょう。
使う材料は傍線部と近く、少ないです。
しかし、その材料の改変は大きいため、レベルはBです。

問二の解説

―線部2「だから北海道でも少し早い」とありますが、なぜですか。理由を答えなさい。

傍線部に「だから」とあるので、論理関係をとらえるところから始めましょう。
すると、傍線部の直前に「千五百メートルを超える山では、五月は虫採りにはまだ早い。」とあります。
この問題も、使えそうな材料はここだけです。
とはいえ、これをそのまま書いても得点にはなりません。
なぜなら、「千五百メートルを超える山」の話をしていますから、傍線部の「北海道」との直接の関係が無いからです。
このギャップを、自分の言葉で埋めなければなりません。

手がかりは、高地と高緯度ということです。
答は、「北海道は、緯度が高いため、高地と同じように、五月でもまだ気温が上がらず、虫が出てこないから。」となります。
やはり、材料は傍線部と近く、少ないのですが、材料の改変は大きいため、レベルはBです。

問三の解説

空欄に入る最も適当な季節を漢字一字で答えなさい。
空欄の直前に「梅雨が明けて一週間すれば」とあるので、季節は夏です。
材料は近く、推測もしやすいので、レベルはAです。

問四の解説

波線部a「らしい」と同じ意味・用法のものを、ア~オの「らしい・らしく」からすべて選び、記号で答えなさい。
波線部は「この季節に出るらしい」となっているため、「推測・推量」の意味であるとわかります。
「すべて選び」という条件が若干難度を上げますが、「らしい」は頻出問題ですから、レベルはAです。

問五の解説

波線部b「連休」とは、「ゴールデンウィーク」のことですが、これは「ゴールデン」と「ウィーク」の二つの外来語を合わせたものです。次の1~8の空欄に適当な外来語を入れて、直後の外来語と合わせた一つの言葉を作りたいと思います。それぞれ最も適当なものを後のA~Hから選び、記号で答えなさい。ただし、同じものはくりかえして使えません。
1 「  」ワーク
2 「  」テンション
3 「  」ニュース
4 「  」ディッシュ
5 「  」ドリンク
6 「  」トレーニング
7 「  」フード
8 「  」コスト

A オーバー B スロー C ソフト D トップ E ハード Fハイ
G メイン Hトップ

スローフード」や「ローコスト」などは少し聞きなれないかもしれませんが、消去法で正解できるでしょう。
レベルはAです。

問六の解説

波線部c「雨」、波線部d「風」とあいますが、次のア~エの雨または風を表す言葉を、春から始めて季節の順に並べかえなさい。
ア梅雨 イ夕立 ウ東風 エ木枯らし

外来語の問題があったかと思えば、今度は失われつつある日本の季節感を問う問題です。
「梅雨・夕立・木枯らし」は何とか季節ごとに並べたいところです。
「東風」を知っていた受験生は少ないでしょうが、灘中受験生なら学習してきたかもしれません。
とはいえ、梅雨が6月・夕立が夏・木枯らしが10~11月であることはわかるのですから、「東風」は春か冬であることは推測できます。
ですから、決して無理な問題ではありません。ほぼ二択ということですね。
答は「ウアイエ」となります。レベルはBです。

問七の解説

次の1~5の様子を表すのにふさわしい、「虫」が使われている言葉として最も適当なものをそれぞれア~オから選び、記号で答えなさい。
1 彼は大変不機嫌で、ささいなことでもすぐにおこりだしそうだ。
2 今日は家を出るときから何かが起こりそうな予感がしてならない。
3 特段理由があるわけではないのだが、あのひとはどうも気にくわない。
4 汚職などで不当な利益を手に入れている人たちのニュースを聞くと、不快でたまらない。
5 ねだれば友達がくれるから、遠足におやつを持っていく必要がないと考えている。
ア 虫ずが走る
イ 虫のいどころが悪い
ウ 虫がいい
エ 虫のしらせ
オ 虫が好かない

灘中受験生であれば、どの言葉も聞いたことがあるでしょう。
学習をしたことがある言葉も多いと思います。
形式も典型的ですから、ぜひ全問正解したいところです。
レベルはAです。

大問二の解説

次の1~5の空欄に入る言葉をひらがなで答えなさい。また、その言葉の意味として最も適当なものを後のア~オから選び、記号で答えなさい。
1「  」の頭も信心から
2くさっても「  」
3「  」の歯ぎしり
4まな板の「  」
5ひょうたんで「  」をおさえる
ア 力がないもの
イ 立派なもの
ウ つまらないもの
エ つかまえにくいもの
オ 悪あがきしないもの

典型的な慣用句の問題です。
「ひょうたんでなまずをおさえる」以外は聞いたことがあるでしょう。
いわしの頭も信心からはA、
くさってもたいもAです。
ごまめの歯ぎしりとまな板のこいはB、
ひょうたんでなまずをおさえるはCといったところです。

大問三の解説

動作を表す言葉には、多くの意味を持つものがあります。次の1~4の各組のa~dは、動作を表すある言葉を言いかえて説明したものです。それぞれなんという動作の説明ですか。ひらがなで答えなさい。
1a 水をまく。
b 目盛りをつける。
c 芝居を行う。
d 網を広げて投げる。

2a 医者に世話になる。
b 映画が上映される。
c 仕組まれたわなにはまる。
d お金や時間が必要になる。

3a 筋肉が急に縮んで痛くなる。
b 気をひいて誘い出す。
c 魚や虫を捕まえる。
d 上からぶらさげる。

4a 理屈が合ってよくわかる。
b 案が認められて成り立つ。
c 火が食物によく行きわたる。
d 声が遠くまでよく聞こえる。

1は、「うつ」です。「目盛りをつける」と「網を広げて投げる」は難しいです。他の二つから思いつきたいです。
レベルはC。

2は、「かかる」です。「映画が上映される」からは難しいです。レベルはB。

3は、「つる」です。「気をひいて誘い出す」と「魚や虫を捕まえる」からは難しいです。レベルはCです。

4は、比較的どれもわかりやすいです。レベルはAです。

大問四の解説

次の1~5の俳句の空欄に入る言葉として、最も適当なものをそれぞれア~オから選び、記号で答えなさい。ただし、同じものはくりかえして使えません。
1 「  」のその真下にて星座狩り
2 「  」の音突きぬけの明るさに
3 「  」の身をさかさまに初音かな
4 「  」が掠めし水のみだれのみ
5 八雲わけ大「  」の行方かな

ア うぐいす イ かわせみ ウ きつつき エ はくちょう オ ふくろう

灘中おなじみ、俳句の問題です。
ほとんどが初見だと思います。
用意された空欄の前後から、論理関係を導き出しましょう。

1は「星座狩り」がヒントです。星座は夜にでますから、「ふくろう」ですね。
レベルはBです。

2は「音突き抜け」がヒント。「きつつき」です。レベルはA。

3は「初音」がヒント。「うぐいす」です。レベルはC。他のものを合わせて、消去法で合わせたいですね。

4は「掠めし水」がヒント。狩をする「かわせみ」です。レベルはC。

5は「八雲わけ」がヒント。高いところを飛ぶ大きい鳥を想像しましょう。「はくちょう」です。レベルはB。

大問五の解説

次の1・2の各文は、二とおりに読み取ることができます。その二とおりの意味がわかるように、それぞれの文を(例)にならって書きかえなさい。

1 私はBさんと同じくらいその人が好きだ。
2 Cさんは、その人を自分の部屋に立ちよらせた。

典型的な出題ではないので、レベルはBでしょうか。
塾のテキストでは、主語述語修飾語の単元で類題があったかもしれません。
1 私→Bさん=その人
私=Bさん→その人
以上のふた通りを表現しましょう。

2 Cさん=自分の部屋←その人
Cさん→自分の部屋=その人
以上のふた通りを表現しましょう。

大問六の解説

次の1~4の熟語の―線部の漢字と同じ意味で使われているものをそれぞれア~オから選び、記号で答えなさい。
1辞典
ア辞職 イ辞世 ウ辞任 エ固辞 オ祝辞

2賛美
ア賛意 イ賛成 ウ賛否 エ協賛 オ賞賛

3質疑
ア質実 イ質問 ウ材質 エ実質 オ上質

4肉眼
ア肉食 イ肉声 ウ肉屋 エ果肉 オ牛肉

1は、レベルAです。「辞」には、「ことば」という意味と「辞める」という意味があります。
二つは全く違う意味なので、混乱は少ないでしょう。

2は、レベルBです。「賛」には「ほめる」という意味と「共感する」という意味があります。
どちらもプラス系なので、少し悩みます。

3はレベルA。「質」には「問う」と「内容」という意味があります。全く違う意味ですから、それほど迷いません。

4もレベルA。「肉」には「自分の身体」と「食物としての肉」との2点があります。ぜひ正解したいところです。

大問七の解説

次の1~3の意味の四字熟語を答えなさい。意味が反対になる漢字ひと組(合わせて二字)が必ずふくまれています。それ以外の二字は、同じ字をくりかえし使ってもかまいません。

1 あっちへ行ったりこっちへ来たり、混乱すること
2 今まで一度もなく、これからも起こらないようなまれな出来事。
3 ほとんど滅亡・敗北などしかかっているものを助けること。

例には「異口同音」が挙げられています。
「異」と「同」が反対の意味ですね。
どの四字熟語も、それ単体だと絶対に勉強したことがあるものです。
しかし、意味と、反対の意味の漢字のセットという条件だけが挙げられているだけだと、思いつきにくいかもしれません。
1は右往左往
2は空前絶後
3は起死回生
以上全てレベルBです。

おわりに

いかがでしょうか?
日本最高峰の灘中とはいえ、簡単に正解できるものもあることがご理解いただけたでしょうか?
しかし、合格者平均点が62、受験者平均点が57点であることを考えると、合格のためには8割以上の得点が必要となり、非常に厳しい入試問題であると感じていただけるのではないでしょうか。(しかも、制限時間はたったの40分間…!)
言葉の世界は、深く、そして広いです。
灘中は、何十年も同じような傾向で出題しているにも関わらず、問題が枯渇することはありません。
六年生になってから慌てて対策をしていると、間に合いません。
低学年時から、もしくは就学前から、未知の言葉に対するアンテナの感度を上げておく必要があるのですね。
過去問題集・赤本をもとに、しっかりと傾向をつかんでくださいね!

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お助け中学入試国語 ゆり

入試問題分析ー2017年洛南高附中③ー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

2017年洛南高附中の物語


今回は、2017年洛南高附中の物語を取り上げます。
洛南の物語は、登場人物の関係が入り組んでいたり、主人公が一般的な小学生離れしたものであることは少ないです。
主人公は小学6年生と近い年齢であることが多く、またその置かれた状況も、想像しやすいものです。

しかし、設問はこれまでの大問と同じく、見つけにくい抜き出し問題や、ハイレベルな言語事項問題が散見されます。
今回も同じく、しっかりと傾向をつかみ、各設問のレベルを見抜き、取捨選択をする余裕が必要となります。
今回も、各小問ごとにレベルを解説していきましょう。

2017年洛南高附中物語の解説

有川浩さんの『だれもが知ってる小さな国』からの出題でした。
↓ぜひ、全文をご覧ください。

まずは、文章全体の構成をつかみましょう。

男女対抗ドッジボールで、主人公のヒコと、彼が淡い好意を抱くヒメとが残って戦い合うことになった。

ヒコは、夢中になって、ついヒメの顔面にボールをぶつけ、けがをさせてしまう。

ヒコは、ヒメに謝ろうとするが、タイミングをつかめずなかなか謝れない。

自分が「振り向け」と願ったテレパシーが届いたかのように振り向いたヒメに、ヒコは謝ることができた。

以上の構成を理解していると、問題を解きやすくなります。
ある程度でいいですから、文章を一読した時点で、構成をつかもうとする意識を持ちましょう。

(1)の解説

―線④⑧⑪のカタカナを漢字に改めなさい。

洛南は、文章の中の言葉を漢字で書く出題をしますから、難度はそれほど高くはありません。
今回は、どれも訓読みの出題でしたが、中学受験生であれば一度ならずとも書いたことがあるものばかりです。
④「責め」
⑧「速め」
⑪「険しく」
どれも、レベルAです。

(2)の解説

―線①「いやがうえにも」⑩「拍子抜けした」のここでの意味としてふさわしいものを、それぞれ次のア~オの中から一つ選んで、記号で答えなさい。

①「いやがうえにも」
「ここでの意味」を問う問題ではありますが、文脈から意味を推測することが難しいです。知らないと答えることはできません。
答は「ア よりいっそう」となります。レベルはCです。

⑩「拍子抜けした」
文脈から、「拍子抜け」には強いマイナスの意味はないことがわかります。
ここから、ア「…こまった」、イ「がっかり」、エ「あきれた」は選ぶことができないと考えられます。
エの「やわらいだ」というプラスの意味も考えにくい。正解はウ「気勢がそがれてとまどった」となります。レベルはAです。

(3)の解説

―線②「余裕は、吹っ飛んでいた」とありますが、このときの「ぼく」の様子の説明として、次のア~オの中から最もふさわしいものを選んで、記号で答えなさい。
傍線部の四行前に「ヒメを討ち取ったら、ヒメはきっとぼくに感心するにちがいない。そのうち、ぼくはそれしか考えられなくなっていた。」とあります。
この内容を表現している選択肢を選べばよいのです。
正解はエ「勝ってヒメに認めてもらいたい一心で、必死になっている様子」となります。
解答の場所も傍線部と近く、見つけやすい上に、選択肢の変化具合も少ないため、レベルはAです。

(4)の解説

空欄Aにあてはまることばを考えて五字以内で答えなさい。
空欄の前後を確認しましょう。
「ご…ごめん」
ぼくの声は、風船の空気が抜ける音のようにしょぼくれていて、□□□□にしか届かなかった。

ヒコは謝っています。しかし、文章全体の流れから、この時点では、ヒコの一番近くにいたはずのヒメにはその声が届いていません。
では、誰には届いたのでしょうか。答えは、自分自身です。
答は「自分の耳」となります。論理的に解答を導きやすいですが、文章全体の流れと絡む問題ですから、少し難度は上がります。レベルはBです。

(5)の解説

―線③「四方八方」は漢数字をふくんだ四字のことばです。次の□に漢数字をあてはめてそれぞれことばを完成させるとき、□a~□fの和はいくつになりますか。漢数字で答えなさい。
朝□a暮□b
□c死□d生
海□e山□f

一つ一つの四字熟語のレベルはB程度ですが、漢数字の和を答えるということで、三つすべてを知っておかないと正解はできません。
朝三暮四・九死一生・海千山千となり、合計は二〇一七となります。
その年の西暦と同じ数字にするという、算数の計算問題のようなおしゃれな問題でした。

(6)の解説

―線⑤「ぼくも、しゃにむにドリルの漢字を書いていた」とありますが、このときの「ぼく」の様子を、五十字以内で説明しなさい。

「しゃにむに」が難しいですが、文脈から「必死に・まじめに・一生懸命に」という意味であることはわかります。
傍線部の後に「まじめにやらないと、何だかヒメに申し訳が立たないような気がしたのだ」とあり、これが材料だとわかります。
しかし、これだけでは字数が足りません。
必要と思われる説明をつけ足していきましょう。
なぜヒメに申し訳ないのか→ボールをぶつけてけがをさせたから。
様子→必死
以上を足すと、答えは「真面目にドリルをしないと、けがをさせたヒメに申し訳ないと思い、必死に取り組んでいる様子。」となります。
傍線部の直後に材料がありますが、説明をつけ足して構成することが少し難しいため、レベルはBです。

(7)の解説

―線⑥「十分」とありますが、「十分」には次の例のように、異なる読み方もあります。
例 十分後に始める。 水はこれだけあれば十分だ。
次の1~3の空欄には、それぞれ同じ漢字を用いた熟語で読み方の異なるものが入ります。その熟語を答えなさい。
1それは決して□□ではない。
 □□を尽くして天命を待つ。
2□□が背筋を走る。
 □□が関東地方に流れ込む。
3彼は日本画の□□だ。
 □□に家賃を渡す。

1人事 2寒気 3大家
どれも難しい問題です。小学生には思いつきにくいです。
それぞれ、レベルはCです。

(8)の解説

―線⑦「みんな笑ったが、ぼくだけまだ笑えなかった」とありますが、これはどのような様子を表していますか。四十五字以内で説明しなさい。

傍線部を言い換える問題です。
言い換え問題は、傍線部の全てを余すところなく言い換える必要があります。
今回の問題は、「みんな笑ったが」と「ぼくだけまだ笑えなかった」の二つに分け、それぞれを言い換えましょう。
「みんな笑った」→傍線部の直前にある「『次は当てるからね』そして、指鉄砲をぼくに向けて、バンと打った」とあります。このヒメの様子に皆は笑ったわけです。
このままでは使いにくいので、「ヒメがおどけた行動をしたことがおもしろく笑った」と言い換えましょう。
「ぼくだけまだ笑えなかった」→傍線部の後に「ごめんは、結局言いそびれた」とあります。
ここを使い、「自分はまだヒメに謝っていないため、心苦しい様子」となります。
以上2点をまとめて、「ヒメがおどけたことをみんなが面白く思い笑った中、ヒコはヒメに謝れていないので心苦しい様子。」となります。
傍線部の直前と直後を使う問題ですが、変化の度合いが大きいため、レベルはBです。

(9)の解説

―線⑨「今だ」とありますが、「ぼく」はなぜ「今」だと思ったのですか。これを説明したものとして、次のア~オ の中から最もふさわしいものを選んで、記号で答えなさい。
傍線部の直後に「今、追いかけて、ごめんねと言ってしまえば。ヒメは道を曲がっていくし、ぼくはこのまままっすぐだから、自然に別れられる」とありますので、これを使って答えましょう。
正解は「エ ヒメと別れる場所にさしかかった今謝れば、謝った後のことをあれこれと考えなくてもよくなるから。」となります。傍線部の近くに材料があり、変化の度合いも少ないため、レベルはAです。

(10)の解説

―線⑫「なぁんだ」とありますが、「ヒメ」は何がわかったというのですか。これを説明した次の文の空欄1・空欄2にあてはまることばを、それぞれ字数に合わせて、文章中からぬき出して答えなさい。

ヒコが1□□□□□□□□(八字)たわけではなく、2□□□□□□□□□(九字)たことについて謝ったのだということ。

傍線部の周りから、1の方には「髪の毛を引っ張ったのがヒコだった」的な内容が入ると推測できます。
2の方には「ボールをぶつけた」的内容であると推測できます。
1の答えは「髪の毛を引っ張っ」となります。場所の推測も容易ですから、レベルはAです。
2の答えは「顔面にボールを当て」となります。場所の推測が難しいですから、レベルはBです。

(11)の解説

空欄B~空欄Dにあてはまることばをそれぞれ文章中から解答欄の字数に合わせてぬき出して答えなさい。

(文章中の空欄の近辺)
B□□□□□(五字)は、すっかり取れていた。
キッとこちらを振り向いた怒った顔も、C□□□(三字)みたいだったなと思った。
考えてみれば、このとき、転校の日の朝以来、初めてヒメとD□□□(三字)でしゃべった。

ヒメの顔を見て考えたことが入ります。
空欄Bの後に「取れていた」とありますから、「ティッシュ」だとわかります。
抜き出し問題として、文章に戻らなくても、正解を書けた受験生が多いでしょう。レベルはAです。
空欄Cは、ヒメの顔を何かに例えているのだとわかります。答は「お人形」です。
空欄Bよりも内容が推測しにくいので、レベルはBです。
空欄Dは、「二人で」的な内容であることは推測できます。しかし、場所の推測はほぼ不可能ですから、しらみつぶしに文章全体を探していく必要があります。レベルはCです。

おわりに

いかがでしょうか?
洛南の物語は、文章全体の内容はわかりやすいことが多いのですが、設問は他と同じく、レベルA~Cの問題が入り乱れています。
しかも、知らないと答えられない言語事項の問題が入っているため、受験生は焦ってしまい、時間をロスする可能性もあります。

冷静に、解ける問題と解けない問題を判断し、一点でも多く得点することができるように、傾向をつかみ、対策を練りましょう。
過去問題集・赤本をもとに、しっかりと傾向をつかんでくださいね!

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お助け中学入試国語 ゆり

入試問題分析ー2017年洛南高附中②ー

こんにちは!
お助け中学入試国語 ゆりです。

2017年洛南高附中の随筆②

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今回は、2017年洛南高附中の大問二を取り上げます。
大問が13個、小問が20個と非常に多いのですが、そのうち実に14個が漢字・言語事項の問題です。
関西最難関の学校の一つである洛南中には、京都駅から徒歩で通えるという好立地もあり、さまざまな地域からの受験生がやってきます。
また、受験日程が、関西地方中学入試統一解禁日から三日目ということから、一日目と二日目に灘中を受けた男子たちの多くが受験します。
言語事項の問題の傾向も似ています。
難度の高さだけでなく、パズル的な要素を含んだ問題。また、外来語を問うことがあるのも特徴です。

言語事項の問題は、非常に厄介です。
知らないと解けないものが多いのに、本番で解けないと焦ってしまう。
いたずらに時間を空費してしまい、他の読解問題に対応できなくなる。
洛南中の言語事項も、ハイレベルなものが含まれていますので、わからないときは潔く切り捨てて次の問題に取り組むという柔軟性と勇気が無いと、60分間という制限時間の中では解き切ることができません。
ですから、前もって十分に知識をつけておくと同時に、問題のレベルを見抜くために傾向を知って対策を練ることが必要です。
今回も、各小問ごとにレベルを解説していきましょう。

2017年洛南高附中随筆文②の解説

村上春樹さんの『職業としての小説家』からの出題でした。
↓ぜひ、全文をご覧ください。

まずは、文章全体の構成をつかみましょう。

小説を書く才能は、掘り起こさないと眠ったままになる

小説を書く才能を磨くには、どんな障害に遭遇しながらも書き続けようとする意志の堅固さが必要だ

意志の堅固さを持続するには、肉体的な訓練も必要だ

精神と肉体はバランス良く両立させなければならない


以上の構成を理解していると、問題を解きやすくなります。
ある程度でいいですから、文章を一読した時点で、構成をつかもうとする意識を持ちましょう。

(1)の解説

―線②⑤⑬のカタカナを漢字に改めなさい。

②ホウっておいても
→訓読みの漢字は意外と見落としがちなのですが、「放る」は一度ならず書いたことがあるでしょう。レベルはAです。
⑤コトにする
→同じく訓読みの漢字ですが、少し書きにくいでしょう。
レベルはBです。
⑬アびたり
→同じく訓読みです。それほど難しくありません。レベルはAです。

(2)の解説

―線①「破格」と同じことばの成り立ちになているものを、次のア~オの中からすべて選んで、記号で答えなさい。

「破」には、「こわれる」という意味と、「従来の体制をなくす」という二つの意味があります。
傍線部と選択肢の「破」がどちらの意味なのかを、言葉の意味からつかむ必要があります。
ちなみに、「破格」は「格を破る」ということで、後者の意味になります。

ア「破屋」…屋(家)が物理的に壊れているので、前者です。
イ「破顔」…顔が壊れるわけではありません。笑うという意味なので、後者です。表情が崩れるのです。
ウ「破線」…破れた線。線が壊れて、点線になっています。
エ「破損」…「破れる」と「損する」で、物理的に壊れるので、前者です。
オ「破竹」…「破竹の勢い」。猛烈に進むという意味で、後者です。
というわけで、答えは「イ・オ」です。
「破」そのもののふたとおりの意味をつかむことも難しいですし、選択肢の言葉も難しいですし、「すべて選んで」という条件も難度をあげます。
レベルはCです。

(3)の解説

―線③「好機」とありますが、「好機」と同じ意味で使われていることばを文章中から二字でぬき出して答えなさい。
「好機」がプラスの意味だということに引っかかりすぎると、混乱します。
あくまでもこの問題は「同じ意味の言葉」を探すのではなく、「同じ意味で使われている言葉」を探すのです。
傍線部の直前に「その」という指示語があるので、傍線部の少し前に答えがあるのではないかと考えられます。
すると、傍線部のほど近く、三行前に「潮時」という言葉があり、これが答えです。
プラスの意味と混乱して、内容の把握は難しいかもしれませんが、場所の把握は容易ですし、傍線部の近くに答えがあることから、レベルはBです。

(4)の解説

―線④「それ」は何のことですか。文章中から七字でぬき出して答えなさい。

(3)と同じく、指示語をもとに考える問題です。
今回の大問の中で、最も難しい問題です。
なぜなら、「内容の推測」「場所の推測」の両方が難しく、答えの材料が傍線部から離れているからです。
まず、指示語の指す内容を直接追うと、「幸運」ということになります。
ここまでは受験生全員が思いつきます。
しかし、ここからが問題です。
いくら指示語のセオリー通りに答えを探しても、七字でまとまった「幸運」的な内容が見当たりません。
この問題を解くには、「幸運」をさらに一段階言い換えて、「筆者にとっての幸運と呼べる事柄」を思いつかなければなりません。
それは、著名な小説家である筆者に、小説家としての才能があったということです。
ここまで思いつけば、あとは文章全体をしらみつぶしに探すだけです。
傍線部の17行も前に「小説を書く才能」とあり、これが答えです。
指示語のセオリーから外れた場所に答えがあるため、見つけられなかった受験生も多いでしょう。
レベルDです。

(5)の解説

―線⑥「オーケー」とありますが、「オーケー」と反対の意味のことばをアルファベット二字で答えなさい。

「オーケー」の意味は全員がわかるでしょうし、その反対がマイナス系の意味だということもわかりますが、「NG」がでにくいかもしれません。
レベルBです。

(6)の解説

―線⑦「左□□□」は「気楽で余裕のあるさま」を伝えることばです。ことばが完成するように□に入る文字を答えなさい。また同じように「気楽で余裕のあるさま」を伝える次の1~3のことばが完成するように□に入る文字を答えなさい。入る文字はひらがなの場合も漢字の場合もあります。
1鬼の居ぬ間の□□□□
2□平楽
3□□をのばす

「左うちわ」は出ないでしょう。学習の機会が少ないです。とはいえ、読書経験が豊富であれば思いつくかもしれません。レベルCです。

「鬼の居ぬ間のせんたく」は思いついてほしいです。レベルAです。

太平楽」は出ないです。正解率はゼロに近かったと思います。レベルDです。

「はねをのばす」は出てほしいです。レベルAです。

(7)の解説

―線⑧「技□」と⑨「器□」の□には同じ漢字が入ります。次のア~オの□にこの漢字と同じ漢字が入るものを一つ選んで、記号で答えなさい。
ア製品を実□化する
イ処理を高□化する
ウ組織を活□化する
エ車体を軽□化する
オ誤りを正□化する

まず、「技□」と「器□」から「量」を導くこと自体が難しいです。
ただし、選択肢の中から選ぶ形式ですから、先に選択肢を埋めることができれば、「そういえばこんな言葉あるかも!」と思いつけたかもしれません。
レベルCです。

(8)の解説

―線⑩「一律」は「すべて同じで例外のないさま」のことですが、次の1~3の意味になるような「一」を用いた二字のことばを、例の□に当てはまるようにそれぞれ答えなさい。
1土地などの一区切り 例「住宅地の一□」
2事物の一部分 例「優勝候補の一□」
3心をひとつにしたまとまり 例「全員が一□となる」

1の「一画」と2の「一角」は、それ自体を思いつくことも難しいですし、同音異義語で混乱したかもしれません。
どちらもレベルCです。
3の「一丸」は正解したいです。レベルBです。

(9)の解説

―線⑪「個別的な相違」とはどのようなことですか。それがわかる部分を五十五字以内でぬき出して、初めと終わりの五字で答えなさい。

内容の推測は難しいですが、場所の推測は簡単です。
なぜなら、傍線部を含む一文に「そこには」とあるので、「個別的な相違」も前の部分にありそうだと考えられるからです。
答えの部分は傍線部の4行前の「いろんな生き方があり、いろんな書き方があります。いろんな見方があり、いろんな言葉の選び方があります。」という部分です。
二文をそのまま抜き出す形式に、「ここで良いのか?」と迷った受験生もいるでしょうが、レベルはBです。

(10)の解説

―線⑫「何かしら通底するもの」とは何のことですか。文章中から三十字以内でぬき出して、初めと終わりの五字で答えなさい。

一文あとの冒頭に「一言で言えばそれは精神の『タフさ』では…」とあり、この内容が答えだとわかります。
また、次の段落からは「生き方のクオリティーを高めるため、肉体的な訓練が必要だという話になるため、話題が変わっているとわかります。
答えは傍線部のあとの5行のうちにあるのではないかと推測できます。
場所と内容の推測ができ、答えも遠くないので、レベルAです。
確実に正解したいところです。

(11)の解説

―線⑭「フィジカルな力」⑮「スピリチュアルな力」とはどういうことですか。次のア~オの中からその組み合わせとしてふさわしいものを一つ選んで、記号で答えなさい。

「フィジカル」が肉体を、「スピリチュアル」が精神を表すと知っていたら簡単なのですが、小学生には厳しいでしょう。
ただし、傍線部の9行前からの段落の内容をしっかりつかめば、「肉体・精神」についての話であるとわかります。とはいえ、本文の内容がそのまま選択肢になっておらず、かなりまとめた内容になっているので、難度は上がります。
レベルCです。

(12)の解説

―線⑯「車の両□」のことばが完成するように□に入る漢字を答えなさい。また同じように次の1~3のことばが完成するように□に入る漢字を答えなさい。
1一挙両□
2喧嘩両□□
3一刀両□

まず、「両輪」は出にくいです。レベルCです。

1の「一挙両得」は正解したいです。レベルAです。
2の「喧嘩両成敗」は少し難しいです。「両輪」よりは思いつきますが、「成敗」をあまり練習していないと思います。レベルBです。
3の「一刀両断」は正解したいです。レベルAです。

(13)の解説

―線⑰「とてもとても単純なセオリーですが、それは僕がこれまでの人生において身をもって学んできたことです」とありますが、「僕」が「学んできたこと」とはどんなことですか。六十字以内で説明しなさい。

字数が多めの記述ですが、レベルはBです。
この辺りで確実に正解、もしくは部分点を取っておきたいです。
傍線部の中に「それは」とあるので、指示語を追いかければ材料があるとわかります。
直前に「肉体が物理的な痛みに支配されていたら、意識を集中させることはできない」とあり、これが答えの材料であるとわかります。
しかし、これだけだと34文字であり、あともう少し説明が欲しいのだろうとわかります。
見つけた部分と同じ内容の部分が、もう少し前にあり、その前に「何のために肉体を鍛えるか」という内容がまとまっているので、そのまま写すのに近い形で解答を作ることができます。
答えは「だらだらと長期戦になりがちな人生を立派に生き抜くために、肉体をしかるべく整備し、また意志を前向きに強固に保つこと。」となります。

おわりに

いかがでしょうか?
このテストの最高点は119点、平均点は3科目の子で84.4、4科目の子で86.2でした。
つまり、全体の6割を正解すれば、国語では落ちないということになるわけです。
お伝えしているレベルCDの問題に引っかかり、自信と時間を無くすことなく、レベルAとBの問題を見抜き、確実に合わせていきましょう!
過去問題集・赤本をもとに、しっかりと傾向をつかんでくださいね!



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